次の役は色気ダダもれ!? 仲野太賀「常に未知のキャラクターに挑める役者でいたいんです」
映画少年だった僕に、舞台への扉を開いてくれたのが岩松さんの作品です
── 岩松作品への参加回数を重ねたことで、内容の解釈や、受け取るものに変化はありましたか? 仲野 岩松さんと過ごす時間が長くなり、戯曲への考え方や価値観に触れる機会が増える毎に、自分自身も作品をより楽しめるようになりました。岩松作品は難しいと言われることも多いんですが、そこも含めて。何とも形容しがたいことの方が、実は重要なんじゃないかと捉えられるようになったというか。演者の視点だけではなく、岩松作品の一ファンとしても、楽しみ方がどんどん深まっている気がします。
── 舞台の世界に足を踏み入れたきっかけも、岩松さんのワークショップへの参加だったそうですね。 仲野 映画少年だったので、映画への憧れは強かったのですが、舞台にはほとんど触れてなかったんです。でも10代後半で初めて岩松さんの舞台を見た時に、舞台って何だかすごい、言葉にできないけれど、確実に心に残るこの感覚は何なんだ! と感じて。映画以外にも楽しい素敵なものが、この世界にはいっぱいあるじゃないか! と、目の前に新しい扉が開いたんです。 知らず知らずのうちに自分の世界を狭めていたことにも気がついて、もっと舞台を見ないと駄目だ、と思いました。それからどんどん興味を持つようになった。舞台の奥深さを初めて体験したのが岩松さんの作品だったので、自分の中では特別なものですね。
深い吸引力があり、余韻が残る。そんな舞台に惹かれ続けています
── 惹かれたのは、舞台ならではの生身の人間が発する迫力のような部分ですか? 仲野 岩松作品の世界観って、外に向かって発光していく魅力というより、エネルギーを吸引していく、引力のような深さがある。その虜になった気がします。だから、この世界をもっと知りたい、この人が書く作品の中に入ってみたいと思った。それでワークショップを受けたのですが、やればやるほど難しい(笑)。でも、台本を読むほどに新しい発見があって、それが当時の僕には鮮烈でしたね。 さらに舞台が始まると、小さな劇場にも関わらず、自分が憧れている俳優さんや映画監督がたくさん観に来ている。自分が本当によいと思うもの、カッコいいと思うものを突き詰めれば、映画とか舞台とか、ジャンルに関係なく繋がったり広がったりするのかもしれないと思いました。