母の遺産継ぐのは家出た長男・長女か同居次女か ドロ沼化招いた「2つの遺言」 法廷から
家に残り介護を続けた次女、家を出た長男と長女。91歳で亡くなった母親の遺産を巡り勃発した骨肉の争いは、法廷に持ち込まれた。母親は生前、世話になった次女に不動産収入など多くの資産を託す一方、長男・長女には一部を相続させるとする遺言書を作成。だが死の直前、遺産については「3人で話し合って」とする別の文書も残していた。〝2つの遺言〟を巡り、裁判所の下した判断は-。 【イラストで解説】遺言書作成の注意点 ■「実子3人のみで」 «多少の不満は自制して、速やかに分割協議が進むことを切に願っています» 令和4年1月に亡くなった母親が、最初の「遺言」をしたためたのは平成27年1月。父親は13年に死去しており、長男、長女、次女の3人の実子に宛てて手書きされたものだった。 冒頭には「遺言書」と書かれ、預貯金などの分割方法などについて詳細に記載。母親が所有するアパートとそこから発生する家賃収入などは次女が受け取り、別に母親が保有する複数の預金・証券口座などは長男と長女に相続・分与すると、丁寧な字体でつづられていた。 問題となったのは、その6年後の令和3年3月に作成された、2通目の文書だ。 «遺産および今後の資産管理は、実子3人 長女、次女、長男のみで話しあって行なってください» 分与する財産について細かく言及していた1通目と違い、文言はこれだけ。筆致に丁寧さは残るものの、文字はやや震えている。この10カ月後、母親は鬼籍に入った。 1通目は、自筆証書遺言の要件を満たした正真正銘の遺言書。にもかかわらず、2通目が書かれた意味は何だったのか。遺言書の内容を取り消し、3人で改めて遺産の配分を話し合ってほしいということか。それとも、遺言書の内容を前提に、その他の資産管理を3人で話し合ってほしいという趣旨からか-。 見解はまとまらず、次女は令和5年、長男・長女を相手取り、1通目の遺言書が有効であることの確認を求める訴訟を、東京地裁に起こした。 ■長く同居