母の遺産継ぐのは家出た長男・長女か同居次女か ドロ沼化招いた「2つの遺言」 法廷から
結局、今年11月12日に言い渡された判決では、2通目の文書は1通目の遺言書の内容を取り消すものではないとして、1通目の遺言書を「有効」とする判決を下した。
裁判官が注目したのは、2通目の文書の「シンプルさ」だった。
1通目の遺言書では自らの財産を正確に把握し分割方法を指定していた母親が、2通目ではそうした詳細な分割方法に一切言及しなかった点を指摘。母親の判断能力は2通目を作った時にも正常であり「仮に遺言を書き換える意図があれば、(2通目の)文書にその旨を記載していたはずだ」と断じた。
さらに、次女の夫が関与してきたことに長女・長男が不満を抱いていた経緯などから、2通目は母親が遺産の分割に際し「次女の夫を関与させないよう指示、希望する趣旨で作成されたと考えるのが自然」と結論づけた。
«仲良く人生を送ってください。いろいろお世話様でした。そして、本当に本当にありがとうございました»
判決が有効とした遺言書を、母親はこう締めくくっている。
ただ、不動産や複数の口座・証券…。残した資産は、きょうだいが円満に分け合うには多すぎたのかもしれない。(橘川玲奈)