『コナン』『フリーレン』…小学館マンガ部門の取り組み
このところ映像化も多い青年コミック
3月1日、小学館漫画賞の贈呈式が帝国ホテルで行われた。『セクシー田中さん』の一件があった後だけに報道陣も詰めかけた。受賞作として注目を集めたのはやはり『葬送のフリーレン』だが、青年コミックでは『ビッグコミックスペリオール』連載の『トリリオンゲーム』が受賞。原作の稲垣理一郎さんと作画の池上遼一さんが舞台に立った。 このところ映像化作品も多い青年コミックについて、第三コミック局の村山広チーフプロデューサーに聞いた。 「『トリリオンゲーム』は昨年7月からTBSで実写ドラマが放送され、主人公がいま人気の目黒蓮さんで話題になりました。映画化も決定し、さらにアニメも同じTBS系で今年放送されます。昨年のドラマはコミックスの売れ行きにも跳ね返りましたが、特にデジタルでよく読まれました。 ドラマの影響といえば、今年1月からNHKでドラマのシーズン2が放送された『ビッグコミック』連載の『正直不動産』もコミックスがよく売れました。ドラマの出来が良かったし、NHKで話題になるとコミックスへの跳ね返りも大きいですね。そもそも不動産業界の裏話を含む物語なのでNHK以外ではドラマ化はできないかもしれませんが。 そのほかにも昨年は『ビッグコミックスピリッツ』連載の『君は放課後インソムニア』が4月からテレビ東京でアニメ化され、6月には実写映画が公開されました。映像化作品はいずれもよく売れましたね」 『君は放課後インソムニア』については、もうひとつ話題があった。 「この作品は、連載自体は昨年8月に終わっているのですが、舞台が石川県七尾市なんです。今回の震災後、製作委員会を中心に実写とアニメをつないだ映像を作って流し、そこから義援金を呼びかけるという取り組みが行われています。マンガのシーンも使われているのですが、マンガがこんな形で社会の役に立つというのは良いことだと思います。今後も現地で展示のイベントを行い、被災地支援の呼びかけをしようという取り組みが進んでいます」(村山チーフプロデューサー) 映像化作品はほかにも多い。 「『ビッグコミックスピリッツ』連載のゆうきまさみ先生の『白暮のクロニクル』が今年、ドラマ化され、WOWOWで配信されています。ゆうき先生の作品としては初めての実写ドラマです。 それから『ビッグコミックスピリッツ』で連載されていた浅野いにお先生の『デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション』という作品が劇場アニメ化され、前章が3月、後章が5月に公開されます。 同じ『ビッグコミックスピリッツ』連載では、既に完結していますが、『チ。 地球の運動について』のアニメ化が発表されています。また『結婚するって、本当ですか』という作品もアニメ化が決定しています。 さらに『ビッグコミックスペリオール』連載の『夏目アラタの結婚』の映画化が決まっています。詳報を楽しみにお待ちください。同誌からはアニメで話題となった『RoOT/ルート オブ オッドタクシー』がさらに実写ドラマ化されます。 あとデジタルの『やわらかスピリッツ』から『怪異と乙女と神隠し』という作品が4月からアニメ化されます。『異世界失格』という作品もアニメ化が決まっています。『やわらかスピリッツ』はまだ新しいメディアですが、映像化作品が少しずつ出ています。 昨年5月末、第三コミック局の青年コミックを『やわらかスピリッツ』も含めて全部まとめた『ビッコミ』というポータルサイトを立ち上げました。課金して読んでもらうのですが、おかげさまで予定値を超える実績をあげています」(同) マンガのグローバル化を示すこんな事例もある。 「『寄生獣』で知られる岩明均先生の『七夕の国』という作品がディズニープラスでドラマ化され、今年の7月から独占配信されます。『ビッグコミックスピリッツ』で1990年代に連載されていた作品ですが、ディズニープラスでの映像化というのは三局作品では初めてです」(同) コミック誌が優勢だった時代には、年齢や性別でセグメント(読者分割)がなされていたのだが、デジタル化が進む中でそうした区別は意味を失いつつある。小学館の青年コミックも一時、『ビッグコミック』『ビッグコミックオリジナル』などやや高齢読者向けの雑誌はデジタル化があまり進んでいないと言われた時期があったが、いまやそういうジャンル分けは意味を失いつつある。前述した小学館漫画賞も以前は少年マンガ、女性マンガなどとジャンルを設け、それぞれのジャンルから受賞作を選んでいたが、今年からそうした区分は廃止された。