「年間110万円」でも、“計画的な贈与”とみなされれば課税対象に…〈暦年贈与〉に求められる工夫とは?【税理士監修】
年間110万円までであれば、非課税で贈与ができる「暦年贈与」。しかし、やり方を間違って「計画的な贈与」とみなされれば課税の対象になるため注意が必要です。本稿では、古尾谷裕昭氏監修の『生前と死後の手続きがきちんとわかる 今さら聞けない相続・贈与の超基本』(朝日新聞出版)より一部を抜粋し、暦年贈与と相続時精算課税制度について解説します。 都道府県「遺産相続事件率」ランキング
生前贈与(1):暦年贈与は年間110万円までは非課税
贈与税には110万円の基礎控除があります。つまり年間110万円までであれば、贈与しても非課税となります。このしくみを利用し、贈与税を軽減する方法が「暦年贈与」です。毎年110万円を10年贈与すれば、無税で1,100万円贈与することができます。 ただし、やり方を間違うと課税対象になるので注意が必要です。 年100万円ずつを10年かけて贈与するという贈与契約を結ぶなどの行為は「定期贈与」とみなされ、1,000万円に対して一度に課税されてしまう可能性があります。時期をずらす、年をあけるなどの工夫が必要です。 暦年贈与で税負担を軽減できる 生前贈与をしたい場合、財産の全額をいっぺんに贈るのではなく何年か小分けにして贈るのが暦年贈与です。年間110万円までが非課税となり、贈与税や相続税の負担を少なくできます。 【暦年贈与とは】 1月1日から12月31日までの1年間(暦年)で、贈与額が110万円以下であれば贈与税が非課税になるしくみを利用した贈与方法。 110万円以上の贈与でも節税効果あり 暦年贈与の金額が110万円以上になった場合、超えた分に対して金額に応じた税率で課税されます。そのため財産が多い場合、贈与税を払っても節税効果は見込めます。 贈与税がかかる場合、かからない場合 贈与税は受け取る側にかかる税金なので、贈る側は税金を払う必要はありません。つまり贈与する人数が多くても、それぞれが年間110万円に収まっていれば受贈者にも贈与税はかかりません。一方で相続財産は減らすことができ、相続税を節税できます。 相続開始前3年(7年)以内の贈与は相続税がかかる 暦年贈与での注意点は、相続発生時、つまり贈与者が亡くなったとき、そこから3年以内にもらった財産は相続財産に加算され、相続税がかかってしまいます(これを「持ち戻し」といいます)。2023(令和5)年度の税制改正により、この持ち戻し期間が現行の3年から7年に延長されます。 規則的な贈与は避けたほうが無難 例えば毎年同じ日に、あるいは決まって同じ金額を贈与していると、計画的な贈与であるとみなされ、贈与税を課されてしまう場合があります。以下のように工夫しましょう。 ・贈与する金額を毎年変える 前年110万円だったとすれば、今年は100万円にするなど、金額を変える。 ・贈与する時期を毎年変える 前年に4月に贈与したとすれば、今年は6月にするなど、時期をずらす。 ・途中で贈与しない年をはさむ 3年続けて贈与したら、翌1年または2年は贈与しないなど、毎年になるのを避ける。