本を読まない子も夢中になる児童書「グレッグのダメ日記」シリーズ。作者・ジェフ・キニー、不登校児へのメッセージは「スマホで世界を狭めないで」
グレッグ少年は成長しきれていない主人公
――シリーズを長年読み続けている読者は多いと思いますし、日本でも「グレッグの話を読むと元気になる」という声が多く、グレッグは弱虫なところもあるけれど、多くの人たちに元気を届ける素晴らしい一面を持っていますね。ジェフさんにとってグレッグはどんな少年ですか?
ジェフ:グレッグはどちらかというとmessyな(とっちらかった)キャラクターかなと思います。人として成長しきっていないのに日記にいろいろなことを書こうとしている。そうすると何が起こるかっていうと、発達しきっていないわけですから、いろいろ試行錯誤するんです。後で読み返すと恥ずかしくなるくらい。子どもの頃っていろんな一面を持っていますよね? そういうところが、読者のみなさんが共感してくれる部分だと思いますし、私自身に似ているところでもあります。 ――グレッグの完璧じゃないところに自分を重ねて共感する子どもは多いような気がします。ジェフさんがグレッグと似ていると感じるのはどんな部分ですか? ジェフ:たくさんあります。彼が日記に書いてきたことは私が実際に経験したこととかなり重なるし、物の見方や欠点もけっこう似ている。ものすごく自分と重なるキャラクターですね。本の中ではそういう似ている部分を強調して大げさに書いていますが。実を言うと、私自身はグレッグよりもっと恥ずかしい体験をしたこともあります(笑)。 ――本当に恥ずかしい体験はこの中には書かれていないということでしょうか(笑)。この作品は10歳前後の子どもたちに人気ですが、ジェフさんが同じくらいの年齢の時はどんな子どもでしたか? ジェフ:けっこういい学生だったと思いますよ(笑)。ただ、ちょっと注意散漫で、ずっと座って先生の話を聞くことができませんでした。何かを書いたり、落書きをしたりしている時は、人の話がちゃんと耳に入ってくるのですが…。いろんなことを考えるクリエイティブなところもあって、自分が周りからは見えない透明人間のような存在に感じていて、周りをずっと観察していたところもありますね。それが物書きになってからものすごく役立ったと思います。 ――小さな頃のさまざまな経験が今に生かされていることが伝わってきます。グレッグのように、何かで「一番になりたい」と夢を抱くこともあったのでしょうか。 ジェフ:これはおそらくアメリカ人のメンタリティーかなと思うのですが、いつかスターになりたいとか、いつか大統領になるぞって思う子はけっこう多いんです。グレッグも「いつかお金持ちになって有名になる」という風に言っていますが、それが現実にはならないことを感じながら、大きな望みを抱いているような状態なんですね。私も子どもの頃、一番になりたいと思ったことがあります。自分の才能が開花して、人に認められたいと。でもグレッグと同じように、その望みが現実的ではないことも感じていました。 ただ、これはアメリカが特殊なわけではないかもしれませんね。子どもっていうのは、たとえばギターを弾けば、何千人もの前で演奏するところをイメージするだろうし、実際にそうなりたいと思うはず。サッカーボールを蹴ってみれば、スター選手になりたいと思うものだろうから。子どもが夢見ることは世界共通のことなのかもしれません。