日銀・黒田総裁会見9月17日(全文1)三本の矢は大きな成果もたらした
菅総理に望むこと、期待することは
テレビ東京:テレビ東京の大江と申します。よろしくお願いいたします。これまで長い間、二人三脚でアベノミクスを進めてきた安倍総理が急遽退任することになりました。率直に今の黒田総裁の心境について教えていただけますでしょうか。また、新たな二人三脚のパートナーである菅新総裁との関係性をお伺いしたいんですけれども、これまでというのはどのようなコミュニケーションを取ってこられたのか。またこれから先、菅総理に望むこと、期待することというのはなんでしょうか。 あともう1点お伺いしたいんですけれども、アメリカはFRBが金融緩和の長期化方針を示していますし、ECBはラガルド総裁が為替相場を注視するという考えを示しています。円高に振れそうな要因が増えているような気もするんですけれども、黒田総裁もこの為替相場の動向には注視していくというお考えでしょうか。この2点、お願いいたします。 黒田:まず第1点につきましては、先ほど来申し上げておりますとおり、日本銀行としては政府と意思の疎通を図りつつ、連携して金融政策を進めてまいりました。この点は安倍前総理の下でも、菅新総理の下でも変わりありません。安倍総理とは、ご承知のように年に2回ほど官邸にお邪魔して、日本経済、あるいは金融状況等についてお話をしてまいりましたし、今後も菅新総理と同様のことができればというふうに思っております。
資金繰り支援、金融市場の安定確保に努める
いずれにいたしましても、当面の経済政策として新総理が、新型コロナウイルスの感染拡大防止と社会経済活動の両立を図って、わが国経済を回復させていくという方針を示しておられますし、またポストコロナを見据えた改革を着実に進めていく必要性についても言及しておられます。日本銀行といたしましても、引き続き新型コロナウイルス感染症への対応としての資金繰り支援、あるいは金融市場の安定確保に努め、またそういうことを通じて日本銀行の使命である2%の物価安定の目標を実現するために、適切な金融政策に務めていく所存であります。 もう1つの、この米国のFRBの政策ですけれども、ご案内のとおり、FRBは先月金融政策の枠組みレビューをして、インフレ目標について、時間を通じて平均して2%を目指すというふうにしました。その上で昨日、政策金利のフォワードガイダンスを変更して、労働市場の状況が最大雇用と判断できる水準まで回復し、インフレ率が2%に達した上で、当面の間、2%を適度に上回る軌道に乗るまで、この現在の金利を据え置くことが適当と見込んでいるというふうに述べております。こうした対応は米国経済、ひいては世界経済の持続的な成長に資するものというふうに期待をしております。 この点、日本銀行ではご案内のとおり、インフレ率が安定的に2%を超えるまで、マネタリーベースの拡大方針を継続するということを約束した、いわゆるオーバーシュート型コミットメントを採用しておりまして、従来からインフレ率が景気の変動などをならしてみて、平均的に2%になるということを目指しているわけであります。今回のFRBの考え方というのは、日本銀行のこれまでの政策面の考え方と軌を一にしたものというふうに考えております。 さらに、日本銀行の政策金利のフォワードガイダンスは、現在の長短金利の水準、またはそれを下回る水準で推移することを想定しているというものでありまして、これは緩和方向を意識しながら金融緩和を継続するという政策運営スタンスを明確にしたものでありまして、先ほども申し上げたとおり、日本銀行では必要があればちゅうちょなく追加的な金融緩和措置を講じる方針であります。 また、ECBのラガルド総裁の発言について、私がなんかコメントする立場にありませんが、私、常に申し上げているとおり、為替レートはファンダメンタルズを反映して、安定的に推移することが望ましいということでありまして、そういう目で為替レートというものを注視しているということは変わりありません。