軍艦島の「半地下の食堂」から「独身女子寮」まで日曜劇場の再現度は驚異的…家賃ゼロの炭鉱夫の破格の収入は
世界遺産の軍艦島に約5000人が住んでいた頃の様子をリアルに再現した日曜劇場「海に眠るダイヤモンド」(TBS系)。過去に現地で取材を行った編集プロダクションの風来堂さんは「ドラマを見て、島のシンボルである地獄段からヒロインが働く食堂までリアルに再現されているのに驚いた」という――。 【写真】昭和30年代の軍艦島の生活風景。行商のほか常設の個人商店もあった ■島の食堂で焼いていたパンまで、70年前の軍艦島を忠実に再現 この秋から始まったTBSの日曜劇場「海に眠るダイヤモンド」。その舞台となっているのが、九州の最西端、長崎県・野母崎半島の約4km西の海上に浮かぶ無人島の端島、通称「軍艦島」だ。ドラマでみごとに再現された70年前の端島の姿に衝撃を受けた人も多いだろう。当時の白黒写真をカラーでよみがえらせた『カラーでよみがえる軍艦島』(風来堂、イースト新書Q)を手がかりに、ドラマの世界がどこまで現実に忠実なのか、探ってみたい。 物語は、かつて端島で暮らしていたという老齢の女性いづみ(宮本信子)の回想を中心に進んでいく。回想シーンは1955年から始まって、6人の若者たちが登場し、端島の生活をリアルに再現するとともに、彼らの青春時代が描かれる。 たとえば、第1話で長崎市から端島に帰ってきた鉄平(神木隆之介)と百合子(土屋太鳳)が訪れた、幼なじみの朝子(杉咲花)が家族とともに切り盛りする食堂。モデルとなったと思われる「厚生食堂」そのままに、建物の半地下に位置している。提供されている料理も、看板メニューのちゃんぽんなど、そのままだ。 「日給社宅18号棟の1階には『厚生食堂』という食堂があった。戦前に会社の福利厚生施設として運営していたため、この名前が付けられた。和洋中さまざまなメニューを提供し、島民に愛された食堂だった。ちゃんぽんやうどんの他、奥にある窯ではパンが焼かれていた。」(『カラーでよみがえる軍艦島』) また、リナ(池田エライザ)が暮らしていた独身女子寮が寺の1階部分にあることも、残されている端島の記録の通りだ。 2層分の高さがある鉄筋コンクリートの人工地盤と、岩盤をまたぐように寺院の本堂が建てられているため、下の道からはかなりの高さがある。1階の独身女子寮の窓からリナが顔を出し、下にいる進平(斎藤工)と言葉を交わすシーンは、当時も実際にこんなことがあったのかなと思わせる。 地獄段も、高層建築物に囲まれて長く伸びている様子が実によく再現されていた。 「地獄段は端島銀座から始まり、日給社宅の16号棟と宮の下社宅と呼ばれた57号棟の間を、壁に沿って島の中央部の岩礁に向かって上っていく。この地獄段の下からの写真は、端島の代表的な風景として用いられることが多い」(同書) ドラマの中でも、買い物をする多くの島民が地獄段の下の端島銀座を歩き、長い階段を行きかっていた。