事故死したケンペスへ捧げた。J1復帰セレッソ大阪の柿谷が涙した理由
試合終了を告げるホイッスルが鳴り響き、3シーズンぶりのJ1昇格が決まった瞬間、セレッソ大阪のキャプテン、MF柿谷曜一朗はセンターサークル付近に倒れ込んでしまった。 ピッチで仰向けになり、冷たい雨を浴びながら両手で目を覆っている。とめどもなく流れてくる涙を見せたくなかったのか。ベンチの選手たちが覆いかぶさってきても、手をどけようとしなかった。 「とにかく嬉しかった。最後のほうは足が痛くて、心のなかで『頼む、守ってくれ』とずっと思っていた。守備陣には本当に感謝しています」 4日にホームのキンチョウスタジアムで行われたJ1昇格プレーオフ決勝。後半7分にMF清原翔平があげた値千金の先制弾を泥臭く守り切り、松本山雅FCを撃破した準決勝に続く下克上を狙ってきたファジアーノ岡山を1‐0で振り切った直後に、柿谷の涙腺は決壊してしまった。 人前でほとんど涙を見せたことのない26歳は、なぜ感情をコントロールできなくなってしまったのか。ひとつには、セレッソのメディカルスタッフに対する感謝の思いがある。 「セレッソの初めてのタイトル…タイトルと言っていいかどうかはわからないけど、J1昇格のかかった試合でピッチに立てた、セレッソの一員としてプレーできた。この5ヶ月間、僕の足のために全力で付き添ってくれたメディカルスタッフには、本当に感謝しきれないくらい感謝しています」 スイス・スーパーリーグの強豪バーゼルから、約1年半ぶりに復帰。初体験のキャプテンをも拝命して臨んだJ2での戦いは、6月8日のV・ファーレン長崎で暗転してしまう。 前半開始早々に相手選手との接触プレーで、右足首を痛めて退場する。右足関節じん帯の損傷で全治は約4週間。しかし、復帰できる時期となっても患部の違和感が消えない。 7月下旬に受けた再検査の結果、手術が必要と告げられる。メスを入れたのは8月2日。全治までは約3ヶ月と発表された。このときから、柿谷の壮絶な闘いが幕を開ける。 「僕の性格上、プレーできないとやっぱりイライラしてしまうところも含めて、メディカルスタッフにはすべて飲み込んでくれて治療に専念させてくれた。僕のわがままというのもすべて聞いてくれて、最後のこの試合に出るために全力でやっていただいた。試合に間に合っているのかは実際にはわからへんけど、無理をしてでも出たいということは言っていたし、無理をさせてくれるように調整してくれたことには本当に感謝の思いしかない」