甲子園“不発”でも花巻東の“怪物スラッガー”佐々木麟太郎へのスカウト評価は不変…「ヤクルト村上宗隆の高校時代よりスイングスピードは上」の称賛の声も
その後の打席でも完全な力負けだった。145キロの直球に差し込まれ、どん詰まりの三飛と、143キロの直球に平凡な一ゴロに打ち取られた。3回に逆転され、4点を追う展開がなおさら焦りを生む。9回に反撃。2点を返して、一発が出れば同点という二死一塁 で5度目の打席が回ってきた。 「今度こそ決めてやるという気持ち」で打席に入ると、米田のスッポ抜けたボールが右ひじに当たり、最後は死球。体をていしてチャンスを広げて、続く田代のタイムリーでは三塁まで懸命に走り、1点差まで迫ったが、米田の153球の熱投の前に涙をのんだ。 試合後、オンライン会見に応じたマスク姿の佐々木は、時折、鼻をすすりながら悔し涙を隠さなかった。 「素晴らしい投手だった。打席を通して徐々に修正していこうと思っていたんですけど…自分がふがいない結果でチームの得点に貢献することができなかったという自分のセンスのなさ、責任を強く感じています」 2年生ながら敗戦の責任を背負い、自分を責め立てた。 微妙な感覚のズレもやはりあったようだ。昨年12月に胸郭出口症候群で両肩を手術。手のしびれをなくすのが目的だった。年末から年始にかけ、リハビリ期間があり、スイングを始めたのが2月下旬。3カ月のブランクがあった。 そこから急ピッチで調整し、関西での合宿を経て3月の練習試合解禁からホームラン6本を上積みした。これで高校通算本塁打を56発まで伸ばしたが、実戦勘を取り戻し切れていない中での甲子園本番に戸惑いはあった。 実際、前日の取材でも「まだフルでいい状態とは言えませんが、術後の状態よりは良くなってきている」と語っていた。 では、プロのスカウトの評価はどうだったのか。ソフトバンクの東北・北海道地区担当、作山和英スカウト(チーフ補佐)は、こう高く評価した。 「手術をして調整不足のところもあって、結果は良くなかったですが、評価は不変です。間違いなく高校生の打者として秀でている。あと2年あるし、打席での立ち姿、スイングスピードはズバ抜けている。きょうはリハビリ明けで不運な面もあった。ポテンシャルは高いので、この経験をバネにさらにレベルアップしてくれたら」