なぜ仰天4ゴールを決めた名古屋グランパス前田直輝は歴代のウルトラマンポーズを取ったのか?
最初は胸の前で両腕を十字に交差させた。2度目は胸の前で今度は両腕でアルファベットのTを作った。3度目は両方の人さし指と中指を伸ばした形で額に当てた。そして、最後は右手を心臓の位置に何度も、誇らしげに叩きつけながら、名古屋グランパスのFW前田直輝は笑顔を弾けさせた。 「ハットトリックなんていつ以来だろう、という感じなので。中学生のときも練習試合はともかく、公式戦では達成していなかったイメージがあるし、素直にというか、非常に嬉しいですね」 ホームの豊田スタジアムで浦和レッズを6-2で一蹴し、1試合消化が少ない状況ながらも3位に浮上した8日の明治安田生命J1リーグ第9節。J1では今シーズン3人目、日本人選手に限れば2018年9月のFW鈴木武蔵(当時V・ファーレン長崎、現北海道コンサドーレ札幌)以来、約1年11カ月ぶりに達成された前田のハットトリックは、ともに無得点で迎えた前半9分に幕を開けた。 ペナルティーエリアの左角あたりからFW金崎夢生が放った、シュート気味の鋭く低いパスに飛び出して右足をダイレクトでヒットさせる。一度はレッズの守護神・西川周作に阻まれたものの、すぐにこぼれ球を拾い、周囲の状況を見極めながら利き足の左足で冷静にゴールネットを揺らした。 再び咆哮をとどろかせたのは、先制点からわずか1分後だった。左タッチライン際を抜け出したFWマテウスから、グラウンダーのクロスが来ると信じて右サイドを全力で疾走。イメージ通りのボールに右足をヒットさせ、今度は西川が防げない一撃をレッズゴールの左側へ突き刺した。 前半38分には中央を縦に突破した、司令塔ガブリエル・シャビエルのスルーパスに反応。右サイドを抜け出し、左足によるコントロールショットでプロになって初めてハットトリックを達成。1点を返された直後の後半5分には4点目をゴール左隅へ蹴り込んだ。 「どれもすごくいいパスばかりで、正直、僕は本当に触るだけというか、合わせて流し込むだけという形だったので。なので、チームメイトに感謝したいですね」 試合後のオンライン会見で言葉を弾ませた前田だが、冒頭でも記したように、ゴール後のパフォーマンスは3度披露した前半と、J1史上で19度目となる1試合4ゴール以上の快挙を達成した後半とでは少し違った。前半のパフォーマンスの意味を問われると、照れくさそうに舞台裏を明かした。