53歳”キングカズ”がJ最年長出場記録更新で躍動…「自分の気合いを示すことで戦う姿勢を見せたかった」
ストライカーの本能が閃いた。必ず自分のところにクロスが来る、と。心身の準備が整っていたからこそ、イメージとやや異なってもとっさに反応できた。公式戦10試合目にして今シーズンの初陣に臨んだ53歳の現役最年長選手、横浜FCのFW三浦知良が閃光のような輝きを放った。 敵地・駅前不動産スタジアムに乗り込み、サガン鳥栖を1-0で下した5日のYBCルヴァンカップのグループステージ第2節。ゲームキャプテンとして先発するとともに、DF土屋征夫(当時ヴァンフォーレ甲府、現東京23FC監督)がもつ42歳10カ月0日の大会最年長出場記録を3年ぶりに、なおかつ大幅に塗り替えたカズに最大の見せ場が訪れたのはともに無得点で迎えた前半30分だった。 右サイドで細かいパスを繋いだ後に、ボランチの齋藤功佑がゴールライン際まで抜け出す。この間にペナルティーエリアの右端にいたカズは、スルスルとニアサイドへポジションを移していた。 「2トップで出ているので、クロスに対しては一人がニア、もう一人がファーへ必ず突っ込む動きを心がけてやっていました。そのなかでサイドに(齋藤)功佑が上手く来てクロスを上げるタイミングで、自分自身のなかで『来るんじゃないか』という予感があって、あそこに飛び込んだんですけど」 齋藤は低く、速いクロスを選択した。ブロックしようとジャンプした、サガンのDF岩下敬輔も届かない。しかし、ボールはカズが思い描いていた軌道からちょっとずれて、相手ゴールから離れた場所に落ちてくる。岩下のブラインドになって見えにくかったはずなのに、それでもカズは体勢を崩しながらも必死に身体を投げ出し、ボールの落ち際で頭の左側を巧みにヒットさせた。 「ボールが若干マイナス気味に戻る感じになってしまったので、ちょっと難しい形でしたけどシュートまでもっていけた。もうひとつタイミングがよければ、ゴールになっていたんじゃないかな、と」 苦しい体勢だった分だけ、ダイビングヘッドから放たれた一撃にはコースを狙う余裕がなかった。ダイブしたサガンのキーパー守田達弥にキャッチされる瞬間を見届けたカズは、悔しさを込めてピッチを右手で叩いた次の瞬間には起き上がり、守備の一の矢となるポジションへ戻っていった。