なぜ仰天4ゴールを決めた名古屋グランパス前田直輝は歴代のウルトラマンポーズを取ったのか?
ウルトラマンに込めた思いをこう語った反町氏は、2015シーズンが後半に入ったころには「最近はカラータイマーが鳴らなくなったよね」と、前田に生じたポジティブな変化に目を細めている。 2016年から2年間所属した横浜F・マリノス。そして、半年間だけJ2の舞台で戦った2度目の松本をへて、2018年夏からグランパスの一員になった25歳は、昨シーズンはクラブおよび自身のキャリアで最多となる9ゴールをマーク。理想とする選手像を、いまではこう思い描いている。 「今シーズンは仕掛け続けることにこだわっていきたい。ボールをもっているときでも、もっていないときでも、そして守備でも躍動感のある姿を見せていきたい」 新型コロナウイルスの影響で公式戦が中断し、クラブも活動を停止。自宅待機を余儀なくされた日々で、自身を支えてくれる夫人の存在にあらためて気がつかされた。あまりの家事の多さに驚かされ、ある夜には「花束の代わりにディナーを」と心機一転、料理をすると申し出たこともある。 「でも、続かんという感じで。料理は難しい。奥が深い。毎日3食作ってくれる奥さんの大変さもそうですけど、ご馳走さまと言って食器を下げると『ちょっとは洗えよ』という雰囲気になって」 公式戦が再開してから1カ月あまり。過密日程のなかで迎えた真夏の戦いへ臨んでいる前田をより強力に後押ししようと、夫人は新たに料理の勉強を開始しているという。 前田がしみじみと語る。 「今回のコロナのなかで、感謝の気持ちがよりいっそう強くなりました。今日のハットトリックで(恩を)ちょっと返せたのかな……というか、こんなのろけ話、いらないでしょう」 休む間もなく公式戦無敗と絶好調をキープする川崎フロンターレとの大一番が続く。12日には決勝トーナメント進出がかかったYBCルヴァンカップのグループステージ最終節を、23日にはリーグ戦での初対決をともにホームで迎える。必勝を期すからこそ、前田は「切り替えないと」と前を向いた。 「今日も6点取っても2点取り返されていることなどに関して、後半への入り方も含めて改善していかなければいけない。正直、(レッズ戦は)もう終わったことだけど、今日一日ぐらいは奥さんに『すごかったでしょ』と言っちゃうかもしれない」 先月18日のサガン鳥栖戦で決めたスーパーボレーが、7日にJ1月間ベストゴールに選出された。一夜明けて達成したハットトリックで、一気に5ゴールとして得点ランキングの4位タイに、日本人選手では鈴木と並ぶ1位に躍り出た前田は、ピッチの上でチームを勝利へ導く無敵のヒーローで、ピッチを離れれば愛妻家、そしてテレビの前でともにウルトラマンに夢中になる子煩悩なパパであり続ける。 (文責・藤江直人/スポーツライター)