なぜ仰天4ゴールを決めた名古屋グランパス前田直輝は歴代のウルトラマンポーズを取ったのか?
「今日観に来てくれている息子が最近、ウルトラマンのことが大好きで。新しく始まった『ウルトラマンZ』を今朝も一緒に観てきたので、最初はウルトラマンZの、その次はウルトラマンタロウの息子のタイガの、最後はウルトラセブンの真似を息子へ向けてやった感じです」 すべては3月に3歳になり、いまは幼稚園児になった長男へ捧げた歴代必殺技のポーズだった。1点目は6月からテレビ東京系列で、毎週土曜日朝に放送が始まった『ウルトラマンZ』のゼスティウム光線。2点目は前作『ウルトラマンタイガ』のストリウムブラスター。そして3点目は昭和40年代前半に放送され、いまも名作として語り継がれる『ウルトラセブン』のエメリウム光線だった。 「奥さんからラインが入っていて、息子も喜んでくれたみたいなのでよかったです」 こう語った前田に、あえて聞いてみた。4点目を決めた後に特別なパフォーマンスを演じなかったのは、必殺技シリーズがネタ切れだったのか、と。答えはエンドが替わった後半で、夫人と長男が観戦していた場所と、攻め込んでいくレッズゴールが離れてしまったことが理由だった。 「息子の目の前でやりたかったので、わざわざ走っていっても疲れちゃうかな、というのもあって。あとは『アイツ、次は何をやるんだ』とハードルが上がるのも、ちょっと嫌だなと思ったので」 前節で柏レイソルに0-1で敗れて今シーズン初黒星を喫したグランパスを、前半だけで5ゴールをあげる大勝へ導いた。チームのピンチを救う痛快無比な大活躍を演じる、まさに無敵のヒーローになった前田は、くしくもウルトラマンというニックネームを別の意味でつけられたことがある。 小学生年代のジュニアから心技体を磨き、トップチームでデビューを果たした東京ヴェルディから、J1に初めて昇格した松本山雅FCへ期限付き移籍した2015シーズン。自ら熱いラブコールを送り、前田を迎え入れた反町康治監督は、前田のプレーの傾向を見てウルトラマンと呼んだ。 「試合の流れから消えている時間が多いから、すぐにカラータイマーが鳴ってしまう、という意味を込めてウルトラマンと言ったんですよ」 いま現在は日本サッカー協会の技術委員長を務める反町氏は、前田の潜在能力に魅せられていた。ヴェルディで叩き込まれた繊細なボールタッチと右サイドからカットインし、左足で放つ豪快なシュートの威力と精度に、松本から初の代表選手が出るならば、能力的には前田と言及したこともある。 「いままでは自分の好きなことだけをやっていればいい、というプレースタイルだった。ただ、サッカー界でそんな特権を与えられているのはメッシだけ。メッシの領域まで到達できないのであれば、攻撃でも守備でもチームのために必要なことを、しっかりやらなきゃダメだと常々伝えてきた」