「不妊治療の末に40歳でやっと妊娠しました」出生前検査を受けるべきか否か...悩み続けた40代夫婦のリアルすぎる告白
大貫京子さん(仮名・44歳)は、2年前40歳で妊娠、出産を経験した。 「36歳で結婚。すぐにでも子供が欲しかったんですが、なかなかできず不妊治療をスタートし、40歳でなんとか妊娠に漕ぎ着けました。不妊治療をしている間もずっと出生前診断については、頭の片隅にありましたね」。 京子さんと夫は、大学の同級生だ。 「30代になってから再会しました。結婚を前提にお付き合いを始めましたが、互いに仕事も順調だったので、時期を見計らって婚姻届を出したという感じです。正直なことをいえば、『子どもはすぐにできる』とたかを括っていたんです」。 京子さんの姉と妹がそのときすでに母になっていたことも大きい。 「姉と妹に子どもがすぐできたんだから、私も大丈夫!ってなんとなく思ってしまっていたんです。それに36歳って高齢出産のなかでも若い方じゃないですか。だから、当初は出生前診断についてもまるで考えていませんでした」。 しかし、京子さん夫妻に思うように子供はできなかった。 「妊娠する=当たり前、と思っていた私にとっては、結構ショックが大きかったですね。初めの半年~1年くらいはまだしも、時間が経つにつれてどんどん心の奥底に見えない鉛が増えていくような感覚。なんで私だけできないの?そんな気持ちがわきおこったり、ちょっと不安定だったと思います」。 周りにも徐々に相談しにくくなったという。
「母や姉、妹は、私を少し腫れ物に触るような感じで。もちろん悪意があるわけじゃないっていうのはわかっています。あっちだって気まずいですよね。妹に至っては私が不妊治療を始めた後に3人目を妊娠したこともあって…。友達や同僚にもこういう話ってしづらいですよね。もっと長い間不妊治療をしている場合だってあるでしょうし。頭の中は不妊治療の不安や愚痴でいっぱいなのに、口に出せない、話題にしづらい、そういう悶々とした日々を過ごしていました」。 周りの妊娠に喜べない自分、当たり前に妊娠できない自分…自分を責めることも多かったという。 「時間は無常にも過ぎていきました。夫とは外出をすることもありましたが、ネットサーフィンしている時間もすごく多かったですね。愚痴を吐き出せない分、そういう記事を検索してしまったり、コメントを探してしまったり…。そういうなかで、徐々に出生前検査についても知識が蓄えられていったように思います」。 今思えば、偏ったものだったかもしれないと京子さんは話す。 「ネットって無意識のうちに自分が好むものをセレクトするし、そうすることで似たような情報が集まってくるじゃないですか。出生前検査についてもそうやって、高齢出産とセットで考えるようになっていったと思います」。 最も大きなインパクトは、唯一妊活を明かしていた上司が検査を決めたことだった。 「ご本人も妊活の末、妊娠をしたばかりだったので、いろいろと相談に乗ってもらっていたんです。もちろん自分からは出生前検査をするかどうかなんて聞けませんでしたが、私を気遣ってか上司の方から話をしてくれたんです」。 上司は病院からの提案があったこともあり、「念の為」という気持ちでNIPT検査を受けたと話したそうだ。 「胎児に異常があるとかそういうことではなく、高齢なのでと説明を受けて、夫婦で話し合って受けたと言っていました。もちろん結果は陰性。陽性だったら話してくれなかったかもしれません。その話を聞いて、もし妊娠をすれば、私も高齢出産になるし、受けることになるかも…と漠然と思っていました」。 【後編】では京子さん自身が妊娠をし、出生前検査をするかどうかの決断を迫られたときの心境を詳しく聞いていきたい。 取材・文/悠木 律