無理は禁物、「共倒れ」だけは避けて! あなたにも訪れる認知症介護「施設どき」の見極めかた
絶対に避けたいのは、家族が抱え込むことによる「共倒れ」
認知症の人がいかにつらくて不安な思いをしているかは、すでにこれまでの記事で説明したとおりですが、認知症介護では、介護にあたっている家族もつらい思いをしていることを忘れてはなりません。 認知症に詳しい川崎幸クリニック院長の杉山孝博医師によると、認知症介護にあたる家族の心理的変化は、「否定」「混乱」「怒り」「あきらめ」を経てようやく、認知症の「受容」という段階に到達するのだそうです。うまくつき合えるようになるまでに、家族がつらい思いをするということは、誰もが知っておくべきです。 ところが苦しい立場におかれると、人はかえって自分のつらい気持ちや状況を、誰にも相談することなく、手助けも受けずに抱え込んでしまうことがあります。認知症とつき合うときいちばんよくないのが、この「抱え込み」です。とくに男性は、助けを求める=弱みを見せることと考えるので、女性以上に抱え込む傾向があるようです。 また、会社勤めをしている人が、介護を理由に仕事をやめるケースもあります。もちろん時と場合にもよりますが、このようなかたちでの退職は、基本的にやめたほうがいいのではないでしょうか。というのも、仕事中は介護のことを忘れられますし、たまには同僚に愚痴を聞いてもらうこともできるでしょう。そうしたところから生まれる心の余裕が、認知症の人への優しさにつながります。「昼間ひとりにして、不自由な思いをさせてごめんね」という心模様です。 ところが仕事をやめてしまうと、認知症の人と「家」という閉じた空間の中でずっと一緒にいなければならなくなり、「あなたがいるために何もできない」という不満ばかりが募るので、行き詰まってしまいます。 お年寄りはいつか亡くなります。つまり、どんな介護にも終わりは必ずあるわけですが、問題はそれがいつか、はっきりしないところにあります。このように先が見えないため、家族は認知症介護によって感じるつらさや疲れが、永遠に続くような錯覚に陥りがちです。このままでは共倒れになってしまいかねません。こういう場合は、お年寄りを滞在型の施設に預けることをお勧めします。