汚い、臭い、公共トイレを日本一美しく!トイレ清掃のプロ集団が考える“きれいの極意”とは?
「かっこいい自分でいたい」という思いが、トイレ掃除の熱源に
――OPTを結成した経緯を教えてください。 大井さん(以下、敬称略): OPTは奥多摩総合開発という会社に所属する形になるんですが、もともと僕は別の仕事の面接を受けてこの会社に入ったので、トイレ清掃をすることになるとは全く思っていませんでした。 ところが2017年頃、会社が東京オリンピックに向けて奥多摩のトイレをきれいにする事業に参画することになり、その担当になってしてほしいと言われたんです。 僕は潔癖症だし、正直、その時はトイレ清掃員に悪いイメージしか持っていなかったので、返事を先伸ばしにしていたのですが、いつの間にか担当することになってしまいました(笑)。
――当時の奥多摩町のトイレは、どんな状況だったのですか? 大井:本当にひどいもので、トイレの外にまで悪臭が漂っていましたし、中に入れば目を突き刺すようなアンモニア臭、便器の中は便と落ち葉とトイレットペーパーがミルフィーユ上に重なっていて。本当に地獄絵図のようでした。 仕事を始めた当初は食欲が落ちてしまい、体重も最大8キロぐらい減りました。家族からも仕事を続けることを反対されていましたし、僕自身も続けられないかもしれないと思っていたんです。 ――そこから、なぜ今のような活動につながったんですか? 大井:ある時、娘が周囲の子どもから僕の仕事をばかにされたと泣きながら帰ってきたんです。ばかにしてきた子どもたちはまだ幼かったので、悪気はなかったと思うんです。ただ振り返れば、そこで辞める材料は全て揃ったんですよね。食欲もなく、精神的にもつらく、家族にも反対され、娘も泣いている……。 でも、逆にそこでスイッチが入ってしまって、「よし、ならば日本一かっこいいトイレ清掃員になってやろう!」と思ったんです。トイレ清掃員が持つ負のイメージ、汚い、臭い、ダサい、怖い、かっこ悪い、これを全部覆してやろうと考えるようになりました。 日本一かっこいいトイレ清掃員になれば、きっとテレビや新聞に取り上げられるだろうと思い、チーム名をつけたのが、OPTの始まりです。他にも作業服をスタイリッシュにしたり、テーマソングを作ったり、試行錯誤してきました。 ――スイッチが入ったのは、娘さんを泣かせたくないという思いが強かったのでしょうか? 大井:いえ、全くそうではありません。僕は今でも家族や会社、まちのためにというような、誰かのために仕事をしたことはありません。ただ「自分がかっこいいことをしたい」という思いに突き動かされている気がします。 ミントさん(敬称略):それは、どうだろう……(笑)。だって、リーダーは頼まれてもいないのに、トイレの外の草刈りとか、屋根の上の掃除までするじゃないですか。はたから見ている私としては、人のために仕事をしているようにしか、見えません。 ――そうなんですか(笑)。 大井:かっこいい自分でいられるような仕事をしていたら、結果として誰かが喜んでくれる、という感じですね(笑)。根本にあるのは、かっこいい自分でいたいという思いです。