「私は白です」乱れる筆致、そして意思疎通はかなわなくなった 無実の訴え届かず死刑確定、袴田さんがつづった数千枚の獄中書簡
そして、続けた。 「釈放されて、10年たちますが、いまだ拘禁症の後遺症といいますか、妄想の世界におり、特に男性への警戒心が強く、男性の訪問には動揺します。玄関の鍵、小窓の鍵など知らないうちにかけてあります。就寝時には電気をつけたままでないと寝られません。釈放後、多少は回復していると思いますが、心は癒えておりません。(略)58年闘ってまいりました。私も91歳でございます、巌は88歳でございます。余命いくばくもない人生かと思いますが、弟・巌を人間らしく過ごさせてくださいますようお願い申し上げます」 袴田さんが獄中にいる間にやりとりした手紙やはがきを今も大切に保管し、内容を「全て記憶している」というひで子さん。結審後取材に応じ、最終意見陳述で「巌が家族へ宛てた思いを裁判官に伝えたかった」と明かした。袴田さんと家族が待ち望んだ再審判決は9月26日午後2時、静岡地裁で言い渡される。「焦っても仕方ない。ただ待つのみ」。ひで子さんは穏やかな表情で話した。