コロナ禍の世界に“見送り方”問う映画 全キャストオーディション開催
日本・スペイン・シンガポール合作オリジナル長編映画『Performing KAORU’s Funeral(直訳:カオルの葬式)』製作プロジェクト(以下、PKFP)。コロナ禍、世界中の人々が生と死について自身のあり方を見つめ直す中、「おみおくり」に焦点をあてた。制作資金を集めるクラウドファンディング第2弾では目標金額を上回る3,032,500円(支援者174人)を達成し5月1日に終了。今後は全キャストをオーディションで決め今秋クランクイン、2022年春の完成を目指す。コロナ禍における制作上の工夫も含め同作をめぐるさまざまな試みについて監督の湯浅典子さん、プロデューサーのシモエダミカさん、キャスティングプロデューサーの笹山まきさんに聞いた。
3人の親しい人の死が作品立ち上げのきっかけ
湯浅さんは本作のメインロケ地、岡山県出身。高校を出た後は東京へ転居し東京都立大学工学部建築学科に学んだが、映像作品の仕事をしたいとの希望を諦めきれず卒業後は番組制作会社に入社。以後さまざまなドラマを手がけ13年にフリーの監督となってからも国内・海外の映画祭で高評価を受けた短編映画『空っぽの渦』(15年)や濱田岳主演『日本をゆっくり走ってみたよ~あの娘のために日本一周~』(AmazonPrimeドラマ、18年)など数々の作品を送り出してきた。 湯浅:この作品を立ち上げたいと思ったのは約3年前のプライベートな出来事が大きいです。親しかった人の死が3人重なり、死に対する向き合い方も葬儀のありようも3者3様で。中でも親友の死は直前まで彼女と電話で話していただけに信じられないものでした。ご遺族の意向で早く荼毘にふしたいとご遺体がない葬儀となり、彼女の死に実感がわかず不思議な気持ちのままお別れしました。そんな体験から「人が生きて行く、死んで行くのを見送る」ことをきちんと捉えたいと。そしてPKFPを立ち上げる中で『空っぽの渦』が18年に韓国の蔚山(ウルサン)の映画祭から招待を受け、そこに他の作品でシモエダさんも来ていて出会ったんです。 シモエダ:政治的に日韓の状況が良くないタイミングでしたが政治と文化は別と、私たちはその日の夜に映画祭に出ていらした監督たちと「こんな映画作りがしたいね」と夢を語り合ったんです。そんな環境のもと初めて思い描く映画作りの話でちゃんと盛り上がれる人、湯浅さんに出会えたんです。