「窓は大きいほうがいい」は間違った常識? “思い込み”で失敗しない家選びのコツ
直射日光より「明かりだまり」
窓の役割には、もう一つ重要なものがあります。室内に明るさを取り入れることです。ただし、ここも誤解している人が多いですが、必ずしも「南」に設けられる必要はないのです。みなさんもご存知の通り、南は太陽の明るい光を取り入れるのに理想的な方角ではあります。冬は太陽の位置が低くなるので部屋の奥まで光が差し込み、夏は太陽の位置が高くなるため、軒さえきちんとつくられていれば日光が室内に届きすぎることもありません。だから多くの人が「南向きの家」「南向きの窓」を求めるわけです。 しかし、室内に日光の明るさを取り入れるのは南向きの窓でなくても可能です。実は、北でも東でも西でも、どの方角でも大丈夫です。それを可能にするのが「明かりだまり」です。直射日光ではなく、日光がたまる空間から間接的に光を取り入れるのです。間接的にとはいっても、薄暗いわけでは決してありません。直射日光のようなダイレクトでギラギラした明るさではありませんが、「明るいな」と感じるには十分なものです。 図1を見てください。北西の角が切り取られた逆L字の敷地に建てられた平屋のおうちです。人目を避けるため、道路に面している南側には窓を一切つけたくないとリクエストされましたが、住宅がひしめき合う密集地であり、平屋で明るさも妥協しないのは、本来であればなかなか難しいケースです。 このおうちに光を取り入れるポイントは、へこんでいる北西のスペースを最大限に活用することでした。ここに面したリビングをキッチンとつながる形で高天井にし、北側の高い位置に窓をつくることで、逆L字のへこみスペースを「日光がたまる場所」とし、この明かりだまりから室内に明るさを取り入れるのです(図2)。 窓は高い位置につけられているため、隣接する家からの視線を感じることもありません。また、この家の場合、リビングの斜めの位置に設けた中庭からも東の日が入りますので、直射日光による明るさとは違う、あたたかな明るさを常に感じることができます。逆L字の敷地という異形地ならではの、光の取り込み方です。