はやぶさ2、ヤマ場の小惑星「着地」は困難なミッション
接近して分かったリュウグウの素顔
はやぶさ2は、ホームポジションでの観測に加え、高度を下げて、リュウグウの表面の詳しい様子や重力などについて観測する運用も数回おこないました。これらの探査の結果、リュウグウはそろばん珠のような形をしたコマ型の小惑星で、直径は約900メートル、自転軸は公転面に対してほぼ垂直、自転周期は約7時間36分ということがわかりました。ただし、自転の方向は地球と逆向きになります。小惑星の場合は、自転が反時計回りになる方向が北になるので、リュウグウの北極と南極の向きは地球と逆になっています。 はやぶさ2は、初代の小惑星探査機「はやぶさ」の経験も活かしながら、設計、運用をされてきたので、現在までのところ、運用面では大きなトラブルは起きていません。しかし、リュウグウの観測が進むにつれて、当初の想定とは異なるリュウグウの素顔が明らかになってきました。 その1つが形です。はやぶさ2が打ち上げられるときには、リュウグウの形や自転軸の傾きなど、詳しい情報はわかっていませんでした。そのため、はやぶさ2の運用チームは、リュウグウに到着するまでの間に、どんな形や自転軸の傾きでも対応できるように、仮想リュウグウのシミュレーションモデルをいくつもつくり、未知の小惑星に対応し、はやぶさ2を適切に操作するための訓練を40回以上繰り返しました。その中で、着地までの降下運用を模擬し、本番さながらの24時間体制で臨む大規模なものも9回実施しています。 ただ、地上での観測結果などをもとにすると、あまり細長い形状ではなく、どちらかというと球に近い形状ではないかという推測が大勢を占めていました。実際に、はやぶさ2がリュウグウに近づいていく中でも、最初は球形に見える画像が送られてきました。 しかし、リュウグウに近づく過程で、球に見えていたものが角ばった形状になっていき、最終的にはコマ型をしていることがわかりました。この形状については、アニメ『機動戦士ガンダム』に登場する要塞「ソロモン」や映画『スター・ウォーズ』に登場する「デス・スター」に似ているという意見もありました。 コマ型の小惑星は他にも知られていたのですが、どれも自転周期が2~4時間と短いものばかりです。リュウグウのように自転周期が7時間を超えるもので、コマ型の小惑星が発見されたのは初めてで、運用チームを驚かせました。