介護施設の宿直手当は「5000円」で大丈夫? 夜間に入居者の「急なお世話」も発生しがちなら、もっと賃金を払ってもらうことはできる? 具体的な“判断基準”を解説
宿直について、通常の労働時間ではないし仮眠もできるから、一定の手当で仕方ない、あるいは実際に起きて活動した時間分の賃金で我慢すべきだ、と考える人もいるかもしれません。 しかし、労働の実態に応じて、不活動時間でも時間外手当や深夜割増賃金が支払われるべき場合もあり、詳細な判断基準や労働基準監督署(以下、労基署)への申請手続きなども定められています。 本記事では、宿直の賃金の取り扱いについて、具体例も交えて説明します。 ▼毎日「8時50分」から朝礼が! 定時は9時だけど「残業代」は請求できる?「義務」か判断するポイントとは?
宿直も原則は労働時間であり賃金支払いの対象になる
「労働時間」は、労働者が使用者の指揮監督の下にある時間です。拘束時間(始業から終業時刻まで)から休憩時間(業務から完全に離れる時間)を除いた時間を指します。労働時間は、実際の業務時間だけでなく、電話応対や非常事態に備えて待機するいわゆる「手待ち時間」も含まれます。 労働時間が1日に8時間、1週間に40時間(法定労働時間※)を越えれば時間外の割増賃金が支払われます。法定休日労働や、午後10時から午前5時までの深夜業には所定の割増賃金が支払われます。※小規模な社会福祉施設等では週44時間等とする例外があります。 宿直の場合、入居者のお世話(夜尿起こし、おむつ取替え、検温等)に備えて待機している時間も含めて労働時間に該当します。
「宿日直勤務」や「監視又は断続的労働」には例外あり。要件は厳格
使用者の指揮監督の下にある時間は労働時間ですが、この原則には2つの例外があります。 「宿日直勤務」と「監視又は断続的労働」については、労基署に申請して許可を得れば「労働時間」「休憩」「休日」の規制が適用除外になることが認められます(「深夜業」に関する規制は、適用除外になりません)。この要件は次のとおり大変厳格です。 ■宿日直勤務 社員が当番制で行う宿直勤務等を指します。すなわち、終業時刻から翌日の始業時刻までの時間や休日について、本来の業務以外に、事務所などで電話応対や非常事態に備えて待機する業務で「常態としてほとんど労働する必要のない業務」です。 例えば、定期的巡視、緊急の文書又は電話の収受、非常事態に備えての待機等です。特定の業種についてはさらに詳しい要件が定められています。 ■社会福祉施設の「宿日直勤務」の厳格な要件 社会福祉施設の場合、この「宿日直勤務」に該当するには次の厳格な要件があります。 ・通常の勤務時間の拘束から完全に解放されている ・夜間に従事する業務は、一般の宿直業務のほかは、少数の入所児・者への夜尿起こし、おむつ取替え、検温等の介助作業で、「軽度」かつ「短時間」の作業に限る (「軽度」には、要介護者を抱きかかえる等身体に負担がかかる場合は含まれません。「短時間」は、一勤務中に1回ないし2回を限度に、1回の所要時間10分程度のものです) ・夜間における児童の生活指導、起床後の着衣指導等は通常の労働と同様の業務であり、「軽度かつ短時間の作業」には該当しない ■「監視又は断続的労働」 監視労働とは、一定部署で監視することを本来の業務とし「常態として身体又は精神的緊張の少ない業務」です(交通関係の監視や車両誘導を行う駐車場の監視等は精神的緊張が高いので、該当しません)。 断続的労働とは、休憩は少ないけれど手待ち時間が多い業務のことです。修繕係等のように通常は業務閑散だが事故に備えて待機するもの、寄宿舎の賄人等で手待ち時間が実作業時間を上回るもの等を指します。マンションの住み込み管理人なども該当しうるでしょう。