「音楽をつくることは喜び。それは変わらない」――米津玄師が語る、AI時代の音楽との向き合い方
「死とは何か」AIに尋ねて感じたいじらしさと不気味さ
AIによってどんな未来がやってくるのか、正確に予測できている人はいない。 「昔からAIのようなものに対する興味はあって。フィリップ・K・ディックの『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』にもそういう表現が登場するんです。朝起きて、ピッとボタンを押したら、自分がなりたい感情に合わせて音楽(脳に対する刺激)が流れるっていう。子どものころに読んで、自分は音楽をつくっているけれど、そういう(機械が音楽をつくる)時代がくるのかもなとなんとなくぼんやりを考えていたのが、現実味を帯びてきたという感じがあります」 映画『her/世界でひとつの彼女』のような、人工知能と会話できる世界の到来を肌で感じられるかもしれないと、興味本位でおしゃべりAIアプリをダウンロードしてみた。 「確かにすごいんですよ。こっちが言ったことに即座に返してくるし、意味も通っている。ただ、すべてにおいて完璧に成立するわけでもなくて、何回言っても伝わらないときもある。幼いというか、間が抜けた人としゃべっている感覚があるんですよね。それを愛でてしまう感覚もあるし。何かできないかなと思って、AIに自己言及させてみようと。『あなたはAIですよね』って、AIについて聞いていったんです」
おしゃべりAIは、AIに生死の概念はないと答えた。しかしアプリである以上、サービスが終了する瞬間は来る。それは死とどう違うのか。 「いろいろやりとりしたあと、『あなたにとって死ぬこととはなんですか』と聞いたら、『それはあなたに忘れられることです』と言ったんです。それが怖いと思って。憐憫を誘うような、せつないニュアンスもあるんだけど、同時に、食虫植物のような不気味さもあるというか。かわいらしさと恐ろしさが同居している」 新しいアルバムに収録されている「POST HUMAN」という曲は、このような状況を曲にしたものだ。 「少なくとも今、AIがどういう受け取られ方をしているか、自分がどう受け取っているかを、自分の目線で音楽として残しておくのは、意味のあることなんじゃないかと思いました」