生成AIの発展と、クリエイターの権利保護は両立する? 上野達弘さんインタビュー後編
AIを使う人が引き受けなければいけない「リスク」
―すでにAIを活用している人も多いと思います。AIを使う上で、著作権という観点から意識するべきことはありますか? 上野:先ほど述べましたように、生成AIを使う人はそれなりのリスクを負って使う必要があると思います。 ある生成AIを使っていて、その生成AIが過去に学習したコンテンツのなかに入っている画像と同じものが出力されたとしても、AIを使っている人にはわからないですよね。それを本の表紙にして出版した段階で初めて判明して、学習元著作物の著作権者から訴えられたら、それ以降の出版は中止しなければならないことになります。 AIを操作した自分はそのことを知らなかったとしても、だからといって許されるものではないので、生成AIを使うということは、それだけリスクを引き受けることを意味するんだと思います。 ─いまお話しされた例の場合のように、開発者側のみに責任があるわけではないんですね。 上野:AIを使う人、AIサービスを提供した人、AIを開発した人がいるとして、全員が責任を負う可能性があるわけです。一番可能性が高いのは最終的な利用者です。 それが怖くて生成AIを使わないという人がいるのも困りますので、Adobeなどは著作権侵害のリスクを低減したAIサービスを提供していて、もし顧客に法的な責任が生じた場合には補償することを表明しています。このように、AIサービス提供者や開発事業者が利用者のリスクを負担するという動きはこれからも出てくるかもしれないですね。 また最近の画像生成AIは、たとえば「ピカチュウを抱っこした女の子の絵を描いて」と指示しても、ピカチュウそのままの画像が出てこないようになっているものが増えています。なぜピカチュウを描いてくれないのかと聞くと、著作権の問題があって……などと答えたりもします。 最近では、生成AIが他人の著作物と類似性のあるようなコンテンツを出さないようにフィルタリングする技術が開発されつつあります。このような技術は今後発展していくと思うので、そうした技術による対応をしていないAI事業者はむしろ責任を問われるようになっていくかもしれません。