ニッセンのトランスジェンダー・乳がん経験者向けブランド「as is」「Heartyell」が誕生した理由
ーこれから強化したい点があれば、教えてください。 悩みが深い部分だからこそ、お客様とのコミュニケーションが大事だと思っているので、今年はもっとたくさんの方にブランドを知っていただく取り組みを強化していこうと考えています。 メンズ体型用ブラジャー・ショーツは、「着用したときに気分が上がるように」「どのデザインにしようか、迷う喜びをご提供できるように」と、当初はデザイン性の高い商品の取り扱いを意図して増やしていましたが、「シンプルなデザインの商品が欲しい」というお声をたくさんいただきました。 このお声を通して、「アウターやシーンによって下着を変えたい」という当たり前の想いに改めて気付かされました。 「as is」が、お客様の生活に密着しているからこそのご要望だと感じるとともに、今後はさらに日常生活を想定したバリエーションが必要だと思っています。 着たい服や下着を、当たり前に買って着られる世の中になるために活動を続けていきます。 そのためにも、より多くの当事者の方に「as is」を知っていただくことが重要です。 商品のことを知っていただければ、今以上にさまざまなお声をいただけるようになりますし、その声を基に商品の改良が進めば、よりよい商品をお届けできるようになると思っています。 社内や一般市場において前例がないことが多く、商品の企画・開発は手探りで進めることが今でも多いです。お客様から商品への具体的なご要望の声をいただくと、非常に励みになります。
フィッティングを繰り返し、誕生した「Heartyell」
ー「Heartyell」に込めた想いを教えてください。 「Heartyell」は、乳がん手術を受けた方の日常を「ほんの少しだけお手伝いしたい」「心を応援したい」という想いを込めたブランドです。 商品のこだわりは、「着心地のよさ」。着用して痛みがないのはもちろんですが、私たちが開発しているのは下着なので、長時間の着用に問題はないか、着脱はしやすいか、といった日常に寄り添える商品に仕上げることを一番に考えています。 また、「下着だからこそ購入しやすい価格で提供できるように」と考え、価格設定は非常に意識しました。 実は、手術経験者へのアンケート調査では、「選べない」「価格が高い」など、現状の下着へのご意見が多くありましたし、「何にどのくらいお金がかかるか分からない」「自分でお店に買いに行けない」といった治療中の不安も多いはずです。 だからこそ、お手頃な価格で安心できる商品を、選ぶ楽しさも感じられるデザインバリエーションでご提供したいと、私たちは強く思っています。 ー商品開発時に、特に時間を要したフェーズはありましたか。 普段の商品開発と比較すると、フィッティングに一番時間がかかりました。手術経験者にご協力をいただかないと、着心地がいいかどうか、肌あたりに問題がないかは確認できません。 試作を重ねたサンプルをフィッティングしてもらい、感想や意見をお聞きして資材やパターンを修正するのですが、納得のいくサンプルを仕上げるのに数ヶ月かかることもありました。 また、商品開発と同時進行でさまざまなアンケート調査を行い、手術経験者の声をより多く、深く掴むように心掛けていました。 これは、実際に試着していただいた商品に対する感想だけではなく、よりお客様の声に寄り添うために、普段から実行している活動でもあります。 ーお客様のご要望は、どのように集められているのでしょうか。 インナー商材に特化したご要望を投稿していただくフォームがあるほか、ご購入商品に関するご意見はレビュー投稿ができるようになっています。レビュー投稿は、インナーに特化しているのではなく、ニッセン全商品が対象です。 そのほかには、ブランド独自のSNSにDMでご意見をいただいたり、コールセンターにお電話をいただいたりすることもあります。 また、「ニッセンリサーチ会員」という、ニッセンが独自に管理・運営しているリサーチシステムもあるので、その会員を対象にアンケート調査や座談会などを定期的に実施しています。さまざまなご意見を、定量的にも定性的にも集めています。