ニッセンのトランスジェンダー・乳がん経験者向けブランド「as is」「Heartyell」が誕生した理由
毎日着用できる快適さが「as is」のこだわり
ー「as is」のコンセプトを教えてください。 コンセプトは、“性・体格・見た目など、さまざまな枠から解放されて「ありのまま=as is」の自分に合ったものを身に着けよう”です。 「as is」の商品のこだわりは、快適さ。インナーは直接肌に身に着けるものなので、やはり快適であることが重要だと考えています。 たとえば、ホックやパワーネットを使えば胸を潰すこと自体は難しくありません。しかし、それでは快適さを損ないます。 快適に付けてもらえる、毎日着用したいぐらい気に入っていただける商品になることが一番です。 弊社がオリジナルで作っている商品に関しては、そこがこだわりであり、強みであると考えています。 第1弾の商品を展開した後に発売した、自社オリジナル商品「胸をフラットにするインナー」は、まさにそのこだわりを持って開発した商品です。 ー快適さにこだわった商品とのことですが、どのような工夫をされたのでしょうか。 一般的な胸をフラットにするインナーは、段数の多いホックや強力なパワーネットを使って胸を強く潰すような仕様になっているものが多いです。胸を潰すことが優先されているので、胸のふくらみは目立たなくなりますが、苦しくて着心地がよくなかったり、着用に苦労したりすることがあるようです。 そこで、弊社ではホックや強力なパワーネットを使わずに胸を潰す方法を検討し、薄手のパワーネットで前身頃にある不織布を後ろに引っ張り、胸を押さえる方法を取り入れました。 これにより、胸を潰しながらも、着心地はできるだけ快適なインナーシリーズを完成させることができました。
ー「as is」の商品作りで、大切にしていることを教えてください。 一番大切にしているのは、「当事者様に寄り添った商品を作ること」です。「as is」では、主に性別適合手術を受けていない方に向けて商品を開発・販売しています。 トランスジェンダーという言葉でひとくくりにするのは難しく、さまざまな事情を抱えて生活されている方がたくさんいらっしゃいます。 商品を使っていただく方々にきちんとご満足いただける商品となるよう、該当される方をレビューモニター様として迎え、商品をフィッティングしていただき、ご意見を反映しながら問題のある部分に改善・改良を施しています。 ー商品作りを進めるにあたって、大変だったことはありますか。 お客様の需要が未知数だったので、どの程度の売り上げが見込めて、どのくらい生産をすればいいのかを把握しにくく、そこが大きな課題でした。実際に企画を始めてから販売までは、1年以上の時間がかかっています。 事業としては不安な状況でしたが、「一度始めたことは目標を達成するまで止めない」と社内上層部と約束し、ブランドローンチに至りました。 また、販売を行う段階では、ニッセンオンラインでの商品紹介ページや商品販売ページで、どのような言葉で伝えるのが当事者様にとって適切なのかも非常に悩みました。 いい商品が出来上がっても、こちらの想いが間違った形で伝わるのはよくないので、その点は非常に注意しながら企画を進めています。 ーブランドローンチ後、お客様からの反響はいかがですか。 「ニッセンがこのような取り組みを始めたことがうれしい」「素敵」だと、「as is」の取り組みそのものに対するポジティブなご意見をたくさんいただいています。 ご自身のお悩みを打ち明けていただいたうえで、商品への具体的なご要望をいただくことが多く、そのような声を商品企画の参考にしています。 「胸をフラットにするインナー」のシリーズでは、メンズ体型用ブラジャー・ショーツに大きな反響がありました。また、弊社がこだわった苦しさを軽減する仕様へのこだわりにも、ご支持をいただいています。 リピートしてくださっているお客様からは、デザイン面でのご要望をいただくことも多いです。メンズ体型用ブラジャー・ショーツは、色柄、デザインのバリエーションを増やすことで、選ぶ楽しさをご提供できればと考えています。