稀代の大横綱・白鵬の好き嫌いが分かれやすい4つの理由
2021年は大相撲にとって「白鵬の引退」という大きな節目となった年でした。達成した多くの偉業とともに、批判や議論も呼んできた横綱白鵬について、相撲ライターの西尾克洋さんは「これまでの固定観念を打ち破った大横綱」と解説します。(Yahoo!ニュースVoice)
白鵬はなぜファンの好き嫌いが分かれやすいのか
2007年に横綱昇進し、史上最多となる45回の優勝を成し遂げた力士が遂に土俵を去る。これだけ大きな存在の引退ともなると、本来は功績を称えると共に存在の大きさを惜しむことになりますが、白鵬については様子が違いました。賞賛や惜別だけではなく、過去の言動や土俵内外の態度について批判的な論調で取り上げるメディアが少なくなかったのです。 歴史上稀に見る大横綱ではありますが、白鵬は好き嫌いというバイアスが掛かりやすく人によって見方が別れる力士であることは事実です。そこで、白鵬について大きな賞賛と物議を醸してきた4つのエピソードとその理由を振り返りたいと思います。
1つ目:「横綱の美」とかけ離れた荒々しい取り口
白鵬は現役生活の終盤に差し掛かると立ち合いから相手の顔面に張り差しやカチ上げを入れる相撲が増えました。こうしたスタイルに対して批判の声が非常に多く、特に場所の趨勢を決めるような一番に一方的な形で勝負を決した時はSNSを中心に物議を醸すことも一度や二度ではありませんでした。 結論から申し上げると、張り差しもカチ上げもルール上の違反行為ではありません。どちらも昔から存在する技術で、過去の横綱も使ってきた歴史があります。ただ大鵬や北の湖、貴乃花といった大横綱たちがこれまでに取ってきた「四つ相撲」を求める声が多いことも事実です。相手力士を受け止めて倒すという形に最強力士としての美を見ているのはファンだけではなく横綱経験者も同様で、白鵬が張り差しやカチ上げを使って勝つと関係者からも苦言を呈される結果となりました。 付け加えると、白鵬自身も元々は大横綱たちの系譜を継承するかのような四つ相撲を取り続けていました。つまり、誰もが白鵬自身が横綱としての美しき相撲を取れることを知っているからこそ、それとは対極の相撲を取る白鵬に対して不満を抱いたと言えるのではないでしょうか。