稀代の大横綱・白鵬の好き嫌いが分かれやすい4つの理由
3つ目:白鵬は「未来を創った大横綱」
白鵬は相撲の戦術という側面で考えて可能性を拡げた力士です。賛否はありましたが、白鵬は前述の通り現役終盤で張り差しやカチ上げを大胆に採り入れました。また、2015年九州場所では栃煌山を相手に立ち合いから猫だましを繰り出しましたし、2021年名古屋場所では正代を相手に徳俵に近いところから仕切るような相撲を見せました。 こうした奇策と言えるような取り口は今までの相撲にも存在してきましたが、「何でもあり」な相撲を取るのは小兵力士だったように思います。少なくとも白鵬のような上位の力士が取る相撲ではありませんでした。横綱や大関に求められるのは、単に結果をというだけではなく相撲の美を体現することが求められていましたが、白鵬はこうした固定観念を打ち破り新たな相撲の概念を創り出した力士と言えます。 そもそも張り差しやカチ上げは脇が空くので相手の攻めを許しかねない面があり、相撲の美という側面以前の問題としてリスキーということもあり負けられない立場の力士が多用できないものでした。白鵬がすごいのはこれまでの力士が取らなかったような戦略で挑んだ時の勝率が非常に高いことです。仮に敗れたとしたら更なる批判に晒されたことでしょう。 白鵬がこのような戦略を取るようになってから、張り差しやカチ上げを使う力士が増えました。そして、白鵬が結果を残した時ほど大きな批判には晒されていないようにも思えます。もしかすると我々の大相撲の美に対する意識は既に変わってきているのかもしれません。現役力士や未来の力士たちがこれに追従し新たな戦略を取るようになったとしたら白鵬は相撲を戦術的に変え、未来の相撲を創り上げた力士として評価される日が来るかもしれません。
4つ目:中学生以下の力士が全世界から参加する「白鵬杯」の主催
白鵬は大相撲のすそ野を広げる活動も行っています。中学生以下の力士が参加する「白鵬杯」という相撲の大会を主催し、過去10回開催しているのです。 白鵬杯の特筆すべきところは ・小中学生男子は誰でも参加できる ・全世界から参加者が集う にあると思います。 通常こうした大会だと地区予選などがありますが、参加を希望する小中学生の少年力士は誰もが本大会に出場可能です。また白鵬杯は全国各地から両国国技館に集うことになりますが、参加費用の一部を主催者が負担しています。2020年には世界13か国から1100人以上の力士が参加しており、少年力士のすそ野拡大に寄与していると言えるでしょう。 そして、過去に白鵬杯に参加した力士が台頭しつつあります。阿武咲(おうのしょう)は上位に定着し、白鵬を相手に勝利したこともありますし、琴ノ若も期待の若手としてその将来を嘱望される存在に成長しました。これからも白鵬杯に参加した力士たちが数多く上位を覗うことになることが予想されます。