天の川銀河の新たな伴銀河を2個発見 数が “少なすぎる” から “多すぎる” 問題へ
宇宙には大小さまざまな銀河がありますが、小さな銀河である「矮小銀河」の中には他の銀河と重力的に結びついた「伴銀河(衛星銀河)」と呼ばれるものがあります。これまで、天の川銀河(銀河系)の伴銀河については、理論的に予測される数に対して実際に見つかった数が少なすぎるという問題がありました。その理由の1つとして、伴銀河が暗すぎるために観測が困難なことが挙げられていました。 天の川銀河と合体した銀河の痕跡を新たに発見 国立天文台の本間大輔氏などの研究チームは、「すばる望遠鏡」の主鏡と超広視野主焦点カメラ「Hyper Suprime-Cam(HSC、ハイパー・シュプリーム・カム)」を組み合わせて空の広い領域を観測する「戦略枠プログラム(HSC-SSP)」からのデータを分析する作業の最終結果を報告しました。その中で、天の川銀河には新たに「ろくぶんぎ座矮小銀河II(Sextans II)」と「おとめ座矮小銀河III(Virgo III)」という2個の伴銀河の有力候補が存在することが明らかにされました(※1)。 ※1…天の川銀河の伴銀河は「○○矮小銀河」ではなく「○○矮小楕円体銀河」と呼ばれることもあります。例えば、今回発見された伴銀河の場合には「ろくぶんぎ座矮小楕円体銀河II」と「おとめ座矮小楕円体銀河III」という別称があることになります。ただし、伝統的に「○○矮小銀河」と呼ばれることが少ない「大マゼラン雲」「小マゼラン雲」、および地球から見て「しし座」にあるいくつかの矮小銀河を除きます。 今回の戦略枠プログラムでは既に3個の伴銀河の有力候補が見つかっており、同じ空の領域ですでに見つかっている4個の伴銀河と合わせると、その数は9個となります。この領域で見つかる伴銀河の数は理論上では3~5個であるため、9個というのは多すぎます。このため、天の川銀河の伴銀河は “数が少なすぎる問題” から “数が多すぎる問題” にシフトしたと言えます。