天の川銀河の新たな伴銀河を2個発見 数が “少なすぎる” から “多すぎる” 問題へ
■伴銀河の “数が少なすぎる問題” という謎
宇宙には大小さまざまな銀河があり、太陽系が存在する天の川銀河は比較的大きな銀河です。一方で、天の川銀河と比べると非常に小さな銀河である「矮小銀河」も存在し、他の銀河と重力的に結合しているものが多数あります。大きな銀河に結びついている矮小銀河を「伴銀河」と呼びます。天の川銀河では有名な「大マゼラン雲」と「小マゼラン雲」を初めとして、伴銀河がいくつか見つかっています。 天の川銀河の伴銀河が全部でいくつあるのかは不明ですが、推定する方法はあります。宇宙には光などで観測ができず、重力でのみその存在を知ることができる「暗黒物質(ダークマター)」があるとされています。小さな暗黒物質の塊にガスが集まると、そこで恒星が生まれ、やがて矮小銀河になると考えられます。暗黒物質の塊の数や規模は、宇宙全体を記述するために標準的に使われているモデルである「Λ-CDM(ラムダ-CDM)」で予測可能であるとされています。 ところが、これまでは暗黒物質の塊から理論上推定される伴銀河の数に対して、実際に観測された伴銀河の数が少なすぎる「ミッシングサテライト問題」と呼ばれる問題がありました。理論的には、1000個以上の暗黒物質の塊の中から絶対等級が0以上の規模の伴銀河は220個(220±50個)生成されると予測されますが、実際に見つかっているのは数十個と、大きな開きがあります。この問題の解決には、以下の3通りの理由が考えられます。 1. 理論(Λ-CDM)が間違っており、実際の暗黒物質の塊はずっと少ない。 2. 暗黒物質の塊から恒星が形成される過程の理論に何らかの誤りがある。 3. 暗すぎて観測できていないだけで、まだ見つかっていない伴銀河が存在する。 1や2の場合、これまで様々な検証にパスしてきた理論に修正を加えるという意味で、波及する影響も大きくなります。一方、3の場合は単純に観測技術の問題であるため、はるかに影響は小さくなります。