高2の息子はいじめで命を絶った…「もう犠牲者を出したくない」と願った両親が直面した"私立という壁"
■2年後、同じ高校でまた生徒が命を絶った ――この事件を報じることになったきっかけを教えてください。 【石川】自殺から1年10カ月後の2019年2月、遺族が会見を開きました。それまでは学校も行政も、自殺者が出た事実を2年近く伏せていたのです。 その間、遺族の要望により学校は三者委を設置しました。弁護士、臨床心理士、他校の元校長ら5名の委員が調査し、複数の生徒が自殺した生徒に対するいじめが日常的に行われていたことを証言しました。それらの調査を踏まえて三者委は検証報告書でいじめがあった事実を認めました。 ところが、学校は報告書の受け入れを拒否し、膠着状態が続いたため、遺族が自ら会見を開くに至りました。遺族はお子さんが自殺したことと、学校や県の対応への不信などを話しました。ただ、僕はその会見には他の取材のため参加することができず、同僚が取材しました。 ■行政も動かず、マスコミに頼った結果 ――その後、2年近くご遺族に併走して取材を続けました。 【石川】遺族による会見に出られなかったものの、事件の行方は気になっていました。そこへ、同じ海星高校で、今度は校内で自殺者が出たというので、学校に駆けつけました。ところが記者に囲まれた学校の対応には違和感を持ちました。「遺族の意向で」の一点張りで何も話さない姿勢はおかしいと思いました。ここから僕は取材を始めることになります。 一方で、2017年に自殺した生徒の遺族は学校の対応への不信を募らせ、行政に問い合わせても助けを得られなくて、会見を開くほどに追い込まれている。覚悟をもって記者会見を開いたご遺族の必死さと孤立無援の状態に対し、報道する仕事の役割として応えなくてはならないと思いました。 ――本では報道の責任についても触れています。 【石川】実は、校内で自殺者が出た際の学校での取材のあと、地元紙の記者と同じタクシーに乗った際、学校の対応の問題を口にしたところ、「うちは書けないから、お宅が頑張ってよ」と言われました。結局、地元紙は遺族の訴えについてはほとんど触れない報道をしました。