高2の息子はいじめで命を絶った…「もう犠牲者を出したくない」と願った両親が直面した"私立という壁"
■いじめ防止対策推進法の重大な欠陥 ――学校の姿勢に不信感を抱いて相談した遺族に対し、行政が学校の側に立った対応をしたとの描写がありました。しかし、遺族の心情を察して学校に働きかけた職員もいたとも書かれています。もし、近い状況に陥ったときに、私たちはいったい、誰を頼ったらいいのかという気持ちになります。 【石川】行政の対応に個人の属人性によって違いが生じていたのは事実です。行政のできることには限界があった、それはやはり法律の構造的な問題に起因していたと思います。構造に影響したのは、私学法と、もうひとつ、いじめ防止対策推進法です。僕はこちらが機能しないことの問題のほうが大きいと考えています。 これは2011年に滋賀県大津市で起きたいじめ自殺事件で、学校や教育委員会が隠蔽を図り責任から逃れようとしたことをきっかけに、議員立法により2013年に施行された法律です。 子どもが自殺して背景にいじめが疑われる場合、学校または学校の設置者には真相の究明と再発防止が義務付けられています。しかし、この法律は教員や学校に対する罰則を定めていません。学校の対応に明らかに問題があったとしても、学校を処罰することはできないのです。 ■税金の入った私学が閉じたままでいいのか 公立学校でもいじめの問題は深刻ですが、公立の場合は学校の上に教育委員会があります。しかし、私学の場合は誰も苦言を呈する人がいません。そのため、私学で生徒の人権に関わるような問題が起きたとき、学校と生徒や家族の間に第三者が介入して問題の根本を検証する機能がありません。この制度の欠陥は改めなくてはならないと思います。 ――一方で、私学運営には多額の公金が補助金として投じられているとも指摘しています。 【石川】この高校には2019年には約4億6000万円の補助金が支出されています。税金が運営資金として使われているわけで、私学であっても公共の存在であるということは重要な側面だと思います。 私学に通う子どもたちにとっての健全な環境とは何かを考えれば、私学の壁となっている閉鎖性は改善する必要があると思います。