高2の息子はいじめで命を絶った…「もう犠牲者を出したくない」と願った両親が直面した"私立という壁"
■行政に助けを求めても「法律の壁」が ――自殺によって子どもを喪うという非常事態ですが、にもかかわらず、遺族が知りたいことを知ることができない非情な現実が、この本でつまびらかになりました。 【石川】事件が起きた直後から、学校は自殺の事実を「突然死」「転校」に替える提案をしました。これは文部科学省の定めた「いじめの重大事態の調査に関するガイドライン」に反しています。また、全校保護者会の開催、息子のクラスでの命に関する話し合い、加害者への指導など、再発を防ぐために願った遺族の申し入れを拒否し、不誠実な対応を取り続けていました。 ――学校と遺族の対立に行政が介入することができないという事態が、私学を定義づけている法律の構造的な問題に起因することが詳細に書かれています。 【石川】遺族は行政に助けを求めても力になってもらえず、さらに傷を深めることになりました。それには法律の壁がありました。私立学校法です。あまり知られていないことかもしれませんが、私立学校は実は教育委員会の管轄ではありません。なので、自殺をはじめ、学校の中で問題が起きたときに、第三者が関与するという機能が働きにくいのです。 ■学校教育法の規定が私立には適用されない ――私立学校法とは? 【石川】私立学校の自主・独立を保障する法律で、公立学校との最も大きな違いは、学校教育法の一部について、私立学校には適用しないと定められていることです。 学校教育法第14条には〈学校が、設備、授業その他の事項について、法令の規定又は都道府県の教育委員会若しくは都道府県知事の定める規程に違反したときは、その変更を命ずることができる〉と規定されています。しかし、これを私立学校には適用しないと私立学校法に定められているのです。 私立中高一貫校の場合、都道府県の知事部局の所管となります。私学は教育委員会の管理下には組み込まれません。知事部局の学事振興課が私学を担当してはいるのですが、実質的には県の指導には強制力がありません。