単語が思い出せず「あれ」「それ」しか出てこない…老化していく脳を元気にする"身近な野菜"
■魚で頭は良くならないが、認知症は予防できる では、魚についてはどうでしょうか。「魚を食べると頭がよくなる」という歌が、脳にこびりついている人も多いかと思います。栄養学的には、魚には、脳の機能を維持するために必須の、オメガ3脂肪酸(DHA、EPA)などが豊富に含まれていることが知られています。 本当にオメガ3脂肪酸を摂取すると、認知機能が向上するのかどうか、私たちも東北大学の学生を対象として、エビデンスレベルの高いランダム化比較対照試験によって調査を行いました。 対照群にはオリーブオイルを摂取させたのですが、結論は、認知機能向上の効果はまったくなし。論文化を断念しました。オリーブオイル自体の効果があったのかもとして、お茶を濁しましたが、おそらく頭をよくすることを目的に魚を食べても無駄と結論しました。 しかし、魚を食べると認知症の予防ができるという研究はたくさんあり、最もエビデンスレベルの高いメタ解析(※)で、高齢者では魚の摂取量が多いほど、アルツハイマー病等の認知症や認知機能低下の予防効果が高いことが示されています。 ※Godosら Aging Clinical and Experimental Research 2024 ■うつ病の症状を改善する働きも確認 こうした研究の多くは欧米人を対象としたものです。普段から比較的魚をよく食べる日本人を対象として、魚を食べることの有益性を示したものとしては、東北大学の研究チームによるものがあり、65歳以上の人を対象に約6年間にわたり追跡調査した結果、魚をよく食べる人ほど認知症のリスクが低いことが明らかになりました(※)。 ※Tsurumakiら British Journal of Nutrition 2019 頻繁に魚を食べる人たちの認知症発症率は、ほとんど食べない人たちと比べると、約85%になることがわかったのです。 これは、DHAやEPAといった魚由来の脂質が、脳の神経細胞の発達を促したり、神経細胞の細胞膜を柔軟にして細胞間の情報伝達をスムーズにしたりするからです。 また、魚にはうつ病の症状を改善する働きもあります。オメガ3脂肪酸(DHA、EPA)の欠乏がうつ病、不安障害などと関連しているということが指摘されています。実際に、複数の研究論文において、体内のDHAレベルが低いとうつ病発症のリスクが高まるということが確認されているのです(※)。 ※Zhouら Frontiers in Psychology 2022 脳はその60%が脂肪で構成されているため、摂取する脂質の質がその働きに影響するというのはイメージしやすいですよね。 魚に含まれるDHAやEPAは、人の体内では合成できない栄養素ですから、食べ物から絶えず摂取する必要があります。食卓に魚を並べるのを意識することで、年齢を重ねてからも脳の働きを健全に保つようにしていきましょう。