単語が思い出せず「あれ」「それ」しか出てこない…老化していく脳を元気にする"身近な野菜"
■納豆、みそ、豆腐のうちベストなのは… ⑤大豆製品 大豆製品には「イソフラボン」が多く含まれていて、健康によいということをご存じの方は多いかと思います。イソフラボンは認知機能や記憶の改善に効果があるという研究結果もあり、認知機能の低下やアルツハイマー型認知症の予防になるかもしれないと期待されています。 大豆製品とひと言でいっても、豆腐や納豆、みそなど、いろいろな種類があります。 どの食品をとるのが認知機能の改善に効果的なのでしょうか。じつはこれまでの研究では、大豆製品や豆腐など個別の大豆加工食品の摂取量と認知機能の関連については、一致した関連が得られていませんでした。 そこで、国立がん研究センターの研究グループが大豆製品、個別の大豆加工食品(納豆、みそ、豆腐)、イソフラボンの摂取量と、その後の認知症リスクの関係について調査しました(※)。 ※Muraiら European Journal Of Nutrition 2022 ■納豆だけに含まれている酵素がカギ その結果、男女ともに大豆製品やイソフラボンの総摂取量と認知症のリスク低下の関連はみられませんでしたが、個別の食品で分析したところ、納豆の摂取量が多い女性の認知症リスクが低下する傾向にあったのです。特に60歳未満の女性で、この傾向が顕著でした。 なぜこうした違いが出たのかというと、発酵食品である納豆には大豆イソフラボンだけでなく、ほかの大豆製品にはない「ナットウキナーゼ」や「ポリアミン」といった酵素が含まれているからだという可能性が示されています。これらは、認知症を引き起こす原因のひとつとも言われる「アミロイドβ」というタンパク質の蓄積を抑制してくれるのです。 男女による結果の違いについては、飲酒や喫煙習慣の違いを考慮しましたが、現時点で明確な理由は明らかではありませんでした。そのため、今後の研究が必要とのことですが、長く日本の食卓で親しまれてきた納豆が、認知症の予防にも効果があるというのは、うれしい結果ですね。 ---------- 川島 隆太(かわしま・りゅうた) 東北大学加齢医学研究所教授 1959年千葉県生まれ。89年東北大学大学院医学研究科修了(医学博士)。脳の機能を調べる「脳機能イメージング研究」の第一人者。ニンテンドーDS用ソフト「脳トレ」シリーズの監修ほか、『スマホが学力を破壊する』(集英社新書)、『オンライン脳』(アスコム)など著書多数。 ----------
東北大学加齢医学研究所教授 川島 隆太