「1本140万円」の超高級日本酒も登場…唎酒師が解説「大吟醸でも特別純米でもない」日本酒の新ジャンル
■「たった1%の酒」となれば1本500万円にも? 山廃仕込みも自然界から乳酸菌を取り込みますが、直接乳酸菌を添加する速醸酛(そくじょうもと)と呼ばれる方法もあります。速醸酛は自然界の乳酸菌を取り込む作業がなく、醸造用乳酸を添加するため、早く製造できます。コストも安くできるので、現在は日本酒の9割が速醸酛になっています。 結果的に山廃と生酛造りは全体の10%しかなくなりました。その中で本来の生酛造りは10%。つまり、全体の1%です。今回のユネスコ文化遺産登録は、手作業による製造法ですから、本来の生酛造りが復活する可能性があります。 それを見越して動き出す醸造会社もあります。たとえば栃木県にある酒造会社の仙禽がつくる「仙禽 無垢」は若い杜氏ですが、「すべて生酛に戻す」と言っています。福島の酒蔵、大七酒造もすべて生酛にするといっています。こうした生酛造りの日本酒を熟酒にする場合には、さらに数が少なくなります。 ジャパニーズウイスキーでは山崎の55年物を100本限定、300万円で売り出しましたが、セカンダリーでは8000万円で取引されています。先日も響の40年物が限定販売されましたが、申し込む際に500字程度の文章を2本書いた上で抽選があり、当たった人には440万円で買う権利が与えられました。 そう考えると、本来の生酛造りの熟酒であれば、1本500万円程度の価格設定も十分にありえるでしょう。本格的な価格上昇が始まる前に日本酒を楽しんでおきましょう。 ---------- 渡部 清二(わたなべ・せいじ) 複眼経済塾 代表取締役・塾長 1967年生まれ。1990年筑波大学第三学群基礎工学類変換工学卒業後、野村證券入社。個人投資家向け資産コンサルティングに10年、機関投資家向け日本株セールスに12年携わる。野村證券在籍時より、『会社四季報』を1ページ目から最後のページまで読む「四季報読破」を開始。20年以上の継続中で、2022年秋号の会社四季報をもって、計100冊を完全読破。2013年野村證券退社。2014年四季リサーチ株式会社設立、代表取締役就任。2016年複眼経済観測所設立、2018年複眼経済塾に社名変更。2017年3月には、一般社団法人ヒューマノミクス実行委員会代表理事に就任。テレビ・ラジオなどの投資番組に出演多数。「会社四季報オンライン」でコラム「四季報読破邁進中」を連載。『インベスターZ』の作者、三田紀房氏の公式サイトでは「世界一「四季報」を愛する男」と紹介された。著書に、『会社四季報の達人が教える 誰も知らない超優良企業』(SB新書)、『会社四季報の達人が教える10倍株・100倍株の探し方』(東洋経済新報社)、『「会社四季報」最強のウラ読み術』(フォレスト出版)、『10倍株の転換点を見つける最強の指標ノート』(KADOKAWA)などがある。 ----------
複眼経済塾 代表取締役・塾長 渡部 清二 聞き手・構成=向山勇