衝撃F1デビュー角田裕毅の可能性と課題
このうち、「チームがどんな開発をしてくるか」というのは、アルファタウリのライバルと見られるマクラーレンとフェラーリの開発状況だろう。3つしかポジションがない表彰台に上がるためには、レッドブル・ホンダ とメルセデスという2強チーム以外のチームで最速でなければならない。今年の開幕戦を見る限り、2強チーム以外で最も速かったのが4位と7位に入賞したマクラーレンと6位と8位に入賞したフェラーリとなる。角田が表彰台に上がるためには、まずこの2チームに予選で勝ち、彼らよりも前からスタートすることが求められる。 それでも、前にはレッドブル・ホンダ とメルセデスの4台がいる。そこで必要となるのが、マルコの言う「レースの状況次第」となるわけだ。これは相手がアクシデントに見舞われるという“運・不運”を指してもいるが、タイヤの使い方やマシンの戦闘力の差という“向き・不向き”という実力も含まれる。 開幕戦で明らかになったことは、王者メルセデスに昨年までのような絶対的な速さが見られなかったことだ。さらにレース終盤に失速したことでもわかるように比較的タイヤに厳しいマシンでもある。逆に後半ペースアップした角田が乗るアルファタウリのマシンはタイヤに優しいという傾向だ。また、メルセデスは比較的暑さが苦手でもある。今後のグランプリで高温化で行われるタイヤに厳しくなりそうなグランプリというと、7月のイギリスGP(昨年はメルセデス勢が相次いでタイヤをパンクさせた)と8月の ハンガリーGPあたりだろう。 もうひとつ、角田が表彰台に上がるために越えなければならないハードルがある。それはチームメートのピエール・ガスリーを 上回ることだ。開幕戦の予選ではQ1でガスリーを上回る2番手だったものの、Q2で失速。しかし、それはQ1からQ2にかけて、装着するタイヤをソフトからミディアムに変えるというルーキーにとっては難しいタイヤ選択を行った ことが関係している。2戦目以降の予選ではQ2でもソフトタイヤを使用するものと考えられる。次戦は17 日からの「イタリアGP」。その予選で角田がどんなアタックを見せるのか、注目したい。 (文責・尾張正博/モータージャーナリスト)