PK戦制し4強進出!GK谷晃生の“神セーブ”裏に恩師と”レジェンド”川口能活の教えあり…「ヒーローになってこい!」
湘南での競争を勝ち抜いた谷は、昨年7月の鹿島戦でJ1リーグ戦デビュー。1-0の完封勝利に貢献するとそのまま定位置を確保し、期限付き移籍をさらに1年間延長し、背番号も「25」から「1」に変えた今シーズンもゴールマウスに君臨している。 トップカテゴリーでの戦いを介して解き放たれ始めた谷のポテンシャルは、東京五輪世代となる年代別代表における序列をも覆させた。今年3月のU-24アルゼンチン代表との国際親善試合で念願のデビュー。3-0の完封勝利を最後尾で支えると、長く守護神を担ってきた大迫敬介(サンフレッチェ広島)から一気にポジションを奪い取った。 谷と同じ20歳で出場した1996年のアトランタ五輪で、王国ブラジルを撃破した「マイアミの奇跡」の主役の一人になったレジェンド、川口氏は2018シーズン限りで現役を引退。翌年からは東京五輪世代を含めた年代別代表のキーパーを指導してきたなかで、谷に関して「ずっと注目していた」と語ったことがある。 「細部までこだわることの重要さを、能活さんからは言われています。練習でやれなければ試合でもできない。キャッチするのか、弾くのか。弾くならばどこに弾くのか。ポジショニングも含めて、試合を意識しながら練習のなかで落とし込めていると思う」 大迫、鈴木彩艶(浦和レッズ)とともにU-24代表に選出され、東京五輪へ向けて本格的に受けるようになった川口コーチの指導を、谷は笑顔で振り返ったことがある。 負ければ終わりのニュージーランド戦でも、ハイボールの処理や最後尾からのビルドアップで日本に安定感をもたらし、どちらに転ぶかわからないPK戦でヒーローになった。 「次も難しいゲームになると思いますけど、自分がしっかりと仕事をしてチームを勝利に導けるように、今日からしっかり切り替えて最善の準備をしていきたい」 谷が見すえたU-24スペイン代表とは、東京五輪前の最後の強化試合として、2週間前にノエビアスタジアム神戸で顔を合わせている。結果は1-1の引き分けだったが、谷をはじめとする主力組が先発した前半は1-0で終えている。 銅メダルを獲得した1968年のメキシコ五輪、そして4位に入賞した2012年のロンドン五輪で、日本はともに準決勝で敗れている。埼玉スタジアムで3日に待つ大一番は勝てば銀メダル以上を確定させる、日本サッカー界の歴史を変える戦いになる。 知人から勧められたマウスピースを「リラックスできる」と気に入り、6月から湘南カラーの緑色のそれを使っている谷は、東京五輪では白色に変えて着用している。さらに心のなかで「今日もよろしく頼むぞ」と呟きながら、左右のゴールポストに額をこすりつける試合前の儀式をへて、一戦ごとに成長している若き守護神は運命のキックオフを待つ。 (文責・藤江直人/スポーツライター)