なぜU-24日本代表は“V候補”メキシコを破る金星を挙げることができたのか…城氏が東京五輪の戦いを分析
大金星と言っていい。失礼かもしれないが、私自身の予想を覆す展開になった。スコアは2-1となったが、勝因は90分間、規律正しくハードワークを続けたディフェンスにある。ロンドン五輪で決勝進出を阻まれ、フランス相手に4-1で大勝していたメキシコを恐れて引くことなく、ラインを高く保ち、前線からプレスをかけていく組織的なディフェンスを我慢強く続け、ワンチャンスをモノにした。 おそらく個の能力の高いメキシコに押し込まれ、自陣のゴール前でボールを持たれると何が起こるかわからないと考え、逆の発想でリスクを回避したのだろう。ある程度、パスを回されることは覚悟した上で、ボール保持者に対して、必ず1枚がプレスをかけにいき、危ないポジションでは2人でカバーにいく。相手の縦パスを狙いボールを奪う、あるいはロングボールに対しては、セカンドボールを必ず拾うというディフェンスのイメージを共有し、その約束事を徹底して貫いた。特にボランチの遠藤―田中の2人が攻守に大きな仕事をしていた。メキシコは前を向いてボールを持つことができなかった。 要所もしっかりと抑え込んだ。メキシコは10番のライネス、OA枠のマルティン、ベガの3人の攻撃力が中心のチームだが、彼らを自由にさせなかった。しかも慌てて飛び込むようなプレッシングではなく、冷静にポジショニングを考え粘り強くマークしたため、メキシコの武器であるはずの縦突破ができず、横に切り込まざるをえなくなり、打ち込めずに下がるという展開が多かった。 そして序盤の早い時間帯に続けざまに2点を奪った展開も日本に味方した。メキシコに焦りが出てリズムを失っていた。 前半6分。中盤でボールを奪い、酒井のスルーパスに堂安が右サイドを抜けて反応。長い距離を走ってきた久保に少し折り返すような形の最高のクロスを送り、称賛すべきシュートが先制点となった。久保はトップスピードでボールを受けながら、左足のアウトサイドですくい上げるようにしてシュートを打った。難しい技術だ。守備に回っていた久保が、そこから攻撃に参加した。今大会は久保のキレ味が目につく。五輪に向けベストの状態に仕上げてきたことで、彼がチームのキーマンとして機能している。 試合後のフラッシュインタビューではキャプテンの吉田が「うまくメキシコのウィークポイントを突けた」というような話をしていた。そのひとつはサイド攻撃だったと思う。 メキシコの“中”は強く、特に中盤の外側が強固だ。だが、サイドには穴があった。メキシコを研究し、戦略を練るなかで、そのウィークポイントをあぶり出し、左サイドに南アフリカ戦で先発させた三好でなく縦にスピードと突破力のある相馬を使ったのだろう。その相馬が、前半11分に左サイドのペナルティエリア内で勝負して相手の反則を誘い、2点目につながるPKを取ったのは必然だったのかもしれない。