2025年も超重要「フィンテック10大トレンド」、DXやAI、BaaSはどうなる?
金融DXの拡大
「2025年の崖」という言葉が出る前から、金融業界ではDX(デジタルトランスフォーメーション)の必要性について繰り返し言及されてきた。 現在は「紙の処理をシステム化」といった個別プロセスをデジタル化するフェーズから、金融機関のオペレーション全体を見直して人員の再配置も含めた組織変革に取り組むフェーズに移行しつつあるものと考えられる。 このために、後述の生成AI活用といった技術的な対応は必要不可欠であるが、「人員再配置」や「組織再編」といった経営レベルでの変化が顕在化するものと予想される。これにより銀行の支店運営や保険の営業部隊といった顧客接点を根本的に見直す動きも増えていくであろう。 併せてDXの推進に対応した人材育成も重要となる。これまでの人材育成に加えて、既存人員のリスキリング、中途採用の早期戦力化といった要素を組み合わせて人事運営を考えていく時代となりつつあることも無視できない。
生成AIの実用化と発達
生成AIの一般利用が始まった当初は「ハルシネーションによる誤解答が多い」「解答の根拠が不明確」「不適切な内容を学習しているケースがある」といった問題点が指摘され、金融機関の利用には課題が多いとの指摘もあったことは確かだ。 一方、生成AIの技術的な進化にともなう精度の向上に加え、大規模言語モデル(LLM)と検索拡張生成(RAG)を組み合わせた手法の発達もあり、目的を限定した利用が多くの金融機関で開始されるようになっている。 ここまでの生成AIは限定的な業務の自動化としてアシスタントの役割を果たしてきたが、次の段階においては、単にタスクを自動化するだけではなく、複雑な業務フローを理解し、タスクの分割、優先順位を付けたり、調整を行って自律的な意思決定を行う「エージェント」としての役割を果たすことが可能になるものと予想される。 この段階に達すると、それまでに人間が担当した業務をそのままAIが代替できるようになり、窓口での接客やコールセンターでの対応も「マシンワーカー」に置き換わっていく可能性がある。 さらに生成AIが発達していくことによって、それぞれの専門性をもった「エージェント」を組み合わせることで、顧客のあらゆる相談に対応できる「マルチエージェント」が出現する未来も想像できる。 あわせて、利用者サイドの金融行動を代替する「マシンカスタマー」の出現も予想され、マシン同士が取引を行う世界も現実のものとなってこよう。