500台の「ド派手な大型トラック」が集結する…利根川河川敷で「デコトラの奇祭」を続けるトラック運転手の正体
■半身不随の一歩手前 田島さんは2019年に会社を息子に譲り、大型トラックの運転を辞めた。日常生活で転ぶことが増えて、左半身のしびれを感じるようになった田島さんは、病院に行くと、「半身不随の一歩手前だよ」と医者に言われた。 病名は、後縦靱帯骨化症。首にある後縦靱帯が骨化して脊髄を圧迫し、歩行障害や手足のしびれなどを引き起こす疾患で、国指定の難病だ。9月に手術日が決まり、首から頭が動かないようにコルセットで固定して生活を送る。「手術が成功したとしても車イスだろうな」と覚悟した。 「その時は足がしびれてステージにも登れなかったな。『俺はトラック野郎だからよ、さすがに車イスでみんなの前に行けねえ。これが最後になると思うから俺の顔をしっかり見ておけ』と言ったんだよ」 その後、幸運なことに10時間にわたる手術は成功し、5カ月の入院が決まり、リハビリに臨むことになった。担当医に「先生、まだまだトラックに乗りたいから、乗れるようにしてくんな」と頼むと、トラックに乗るために必要な高さのステップ台を用意し、リハビリを進めてくれた。 退院する頃には、しびれなどの後遺症が残り、立つ時には誰かの支えが必要な状態だったが、1年ほど経つと自分の足で歩けるようになった。 ■「デコトラよりもデコトラを好きな人間が好きなんだよ」 現在は、ライフワークとなったボランティア活動にも励んでいる。ただ、左半身が自由にならないことでクラッチ操作への不安を覚えたため、近場を除いた大型トラックの運転は辞めたという。 満身創痍な田島さんだが、表舞台から引退して、活動を縮小することは考えていないのだろうか。質問を投げかけると、ゆっくりと言葉を紡いだ。 「考えてはいる」 そして、1人1人の会員の顔を思い浮かべているのか、少しの間を置き「でも」と言葉を続けた。 「年越しもそうなんだけど、イベントが近づくと色んなやつから連絡がくるんだ。そういうのがあるから仕方ないよな。それに会員同士の相性みてえなもんもある。もう少し続けないといけないよな」 最後に「まだデコトラは好きなんですか」と質問をすると声を大きくして笑った。 「そりゃあ好きじゃないとこんなに続けないよ! でも、俺はデコトラよりもデコトラを好きな人間が好きなんだよ。世の中から外れてしまったやつらもいるけど、みんな純粋なんだ。デコトラがないと、いいやつらの見わけがつかねえんだよな(笑)」 孤独な人の光になることを矜持にした哥麿会は2025年に50周年を迎える。今年の12月31日の夜、利根川の河川敷では500台のデコトラが眩い輝きを放つ。 ---------- 中 たんぺい(なか・たんぺい) フリーライター 1989年生まれ。グルメ・テック・Webエンタメに関わるヒト・モノ・コトの魅力を深掘りするライターとして活動を行う。メーカー勤務10年を経て独立。群馬県在住。 ----------
フリーライター 中 たんぺい