「株価が2倍になった時のPER」を考えよ、米プロ投資家が伝授する必勝術
成功のカギは「株価が2倍になった時のPER(株価収益率)」
■成功のカギは「株価が2倍になった時のPER(株価収益率)」 オポチュニティ・ファンドの成功のカギは、企業の成長に投資をするというDNAを持ちながらも、厳格なバリュエーションの制限を投資プロセスに組み込んでいることだ。 カリナンがある株式を購入する際、どんな場合でも、5年という時間軸で少なくとも2倍の株価上昇を見込める企業かどうかというのが第一のルールである。しかし、そのルールに加えて、より厳格で、明確で、珍しい、もう1つのルールがある。それは、5年後に株価が2倍になったと仮定して算出した時のPER(2倍になったときの株価÷5年後の予想利益)が、彼らが業界ごとに設定した倍率の上限を超えていてはならないというものだ。 例えば、カリナンはソフトウェア業界を「現存する最大の産業」と賞賛している。しかし、株価が2倍になった時のPERが、彼らが予想した5年後の利益ベースで30倍以上となる場合は投資を見送る。その上限倍率は、医療機器の場合は28倍程度、半導体製造装置は22倍、消費者関連株は10倍台後半と設定しているという。 少し複雑に聞こえるかもしれないが、このルールは実際に適用してみると非常にシンプルだ。仮に、あるソフトウェア会社が5年後に1株当たり5ドルの利益を上げると予想した場合、カリナンはその株式に75ドル以上を支払うことはないだろう。 しかも、このルールは1回で終わるものではない。このルールは現在保有している銘柄にも適用され、しばしばファンドがトラブルを回避するために売却するのに役立っている。 最も好調だった2020年にはオポチュニティ・ファンドは83%のリターンを叩き出した。コロナ禍で注目された遠隔医療銘柄のテラドック・ヘルスや、そのテラドックがその年の後半に買収したリヴォンゴ・ヘルスなどがその牽引役となった。オポチュニティ・ファンドは、その年に急拡大したオンライントラフィックやeコマースでの購買動向をいち早く察知し、2020年の第1四半期にテラドックの株式を買い始める。 しかし、その年の最初の7カ月間だけで株価が3倍になった時、彼らはその株価を正当化できなくなった。そこで彼らは、同年の第3四半期末までにテラドックの保有株をすべて手放すことにした。結果として、2021年初頭までテラドックの株価は上昇が続いたことで、約30%の値上がり益を逃すことになる。しかし、その後テラドックは約97%もの暴落に見舞われ、キャシー・ウッドが率いるアーク・インベストメントなどとは違い、その暴落から被害を被ることはなかった。 「いったん遠隔医療が普通のものになると、それはコモディティ化し、誰もが参入するようになりました。新型コロナによる影響は同社にとって短期的にはプラス、長期的にはマイナスに働き、同社の競争優位性はなくなってしまったのです」と共同ポートフォリオ・マネージャーのマット・アンガーはいう。「それまでの株価の上がり方を考えると、比較的、簡単な売り判断でした」