「株価が2倍になった時のPER」を考えよ、米プロ投資家が伝授する必勝術
AIブームに頼らないパフォーマンス
■AIブームに頼らないパフォーマンス 今年前半、ラッセル2000指数を支えたのは、データサーバーの製造企業であるスーパー・マイクロ・コンピュータと、企業向けソフトウェアを提供し、多額のビットコインを保有することでも知られるマイクロストラテジーのわずか2銘柄だった。両社ともに株価は大きく上昇したことでラッセル2000指数から外れたが、スーパー・マイクロは7月に入ってから株価の半分を失い、2024年の上昇率は36%に縮小した。オポチュニティ・ファンドは、その急上昇を見せたどちらの株式も保有していない。現在、同ファンドのポートフォリオの大半はヘルスケア、ハイテク、消費者関連株で占められており、保有額もファンドが設定する上限に達している。 「確かに、AIはこれまで見てきた技術の中で最も長期的な可能性を秘めていると思います。その前提には同意しますが、(AIは)少し過剰な領域に到達しているとも思います」とウォンはいう。「現時点では、AIが生み出すお金はそれほど多くありません」 オポチュニティ・ファンドは、半導体製造に使用する各種システムなどを手がけるオントゥー・イノベーション(株価は今年16%上昇)への投資を含め、AI関連の銘柄をいくつか持っているが、同ファンドの好パフォーマンスのほとんどは、他のセクターの銘柄が生み出している。 彼らが投資した2つの医療機器企業、ショックウェーブ・メディカルとアクソニクスは、今年ジョンソン・エンド・ジョンソンとボストン・サイエンティフィックによって高値で買収された。加えて、オポチュニティ・ファンドのヘルスケア銘柄群には、前立腺肥大症の低侵襲治療法を開発したプロセプト・バイオロボティクスなどがある。オポチュニティ・ファンドは今年第1四半期に同株を買い始め、同社の過去12カ月における売上成長率が74%に達したことなどを材料に、株価は購入以来55%上昇した。 サラダ専門ファストフードチェーンのスイートグリーンも、ファンドが今年第1四半期に購入した銘柄で、今年株価は3倍に上昇し、彼らはその値上がり益の大半を享受した。2021年に高値で新規株式公開(IPO)したスイートグリーンの株価は、売上が伸び続けているにもかかわらず、2023年末までに80%下落した。ウォンは、同社の225店舗をチポトレの3500店舗と比較し、長い間二桁増収を達成してきた実績や、より効率的にサラダを作るためのロボットキッチンなどを好材料として挙げた。 これらの小型株は時に大きく株価が変動し、その結果、利益を確定したり、ある銘柄が目標とする株価までに達したときに株式の再評価を行うため、ポートフォリオの回転率は高くなる傾向がある。同ファンドの売買回転率は年間100%(1年にポートフォリオが総入れ替えされる)以上となっているが、カリナンは、利益がすぐに出て次の大きなチャンスに投資できるのであれば、それは「バグではなく特徴」だと考えている。 「小型成長株投資というカテゴリーは、多くの投資家が目を向けないような新興企業への投資でとてつもないリターンを挙げられる分野なのです」とカリナンはいう。「多くの投資家が目を向けないというフェーズを越え、注目が集まるときこそ、購入金額の何倍ものリターンを上げられるのです」
Hank Tucker