全日本新人王MVPは衝撃の125秒TKO勝利の奈良井翼…減量失敗棄権、引退に揺れてからの3年越し汚名返上リング
2年越しの再挑戦となった新人王の舞台には、「もしまた体重を落とせなかったらさすがにやばい。過信しているわけじゃないが、パンチに自信があったので、スーパーフェザー級でも行けるのでは」と階級を2つ上げてスーパーフェザー級でエントリーした。 リミットが55.34キロから58.97キロに上がり、減量も7キロほどになったが、それとは引き換えに恐怖というリスクを背負うことになった。 「スーパーバンタム級では怖さはなかったが、スーパーフェザー級では、後頭部にパンチをもらったら、ふらふら。8オンスでの殴り合いは怖い」 前夜は、その恐怖感と戦った。ここまで5KOしてきた自分の動画を見て「これでいける」と言い聞かせ、“バイブル”「はじめの一歩」を読み、恐怖感を拭いさった。 目標は「2、3年以内にユース王者、5年以内に世界王者」。 7勝(6KO)の奈良井に柳光会長は「新型コロナの影響や、前回の減量失敗のことがあったので今回は本人の意志を尊重してスーパーフェザー級でやったが、あのパンチ力を生かす適正階級はフェザー級かもしれない。ポカせず集中力をつけていかなくてはいけないが、世界王者を目指せる可能性のあるボクサー。まずは日本タイトルから」と期待を寄せる。 そして、奈良井は、また家族の話をした。 「昔は厳しい父ちゃんがクソ嫌いだった。なんで休みの日にキックの試合に出されて怒られなあかんの?って。でも実家の一階にサンドバックを吊り下げてジムを作ってくれ素人なのに色々本を調べて教えてくれた。東京に来て、お金のかかる一人暮らしをして、よく父ちゃんは、オレにボクシングをさせ、家族を食わせてくれたなあと。今は感謝している。だからボクシングで稼ぎ、世界王者になってマンションを買ってやりたい」 父の優さんは1月1日が50歳の誕生日。 「この新人王が誕生日プレゼントになった」 心優しき新人王は泣ける話で20分以上続いた会見をまとめた。現在は、鉄骨を扱う建築現場で働き、夢を追いかけている。感謝の気持ちを忘れぬプロアスリートは強くなる。