ヒットコンテンツメーカーの哲学、高橋弘樹氏の挑戦と成功するクリエイティブの秘訣
そういう作家性みたいなものは、その人の歩んできた人生があるから、味わえるんじゃないですか。太宰治の『人間失格』だから興味がありますけど、AIにあれを書かれてもちょっとっていう。
――今までコレは失敗したなっていう番組はありますか。どんなポイントで失敗に向かったんでしょうか マーケティングの思考が強すぎる番組で失敗したことがありますね。テレ東にいたとき「のりもの天国」っていう番組を作ったことがあって。僕ももともと乗り物が好きだったし、鉄道ってやっぱり数字を持っているからっていう安易な気持ちで作りました。自分の中でそれを絶対作らなきゃいけない、みたいな感情が動いていたかというとそうじゃない。そういう気持ちで作るとダメですね。 熱量はどこから生まれるかを物理になぞらえると、摩擦で出るわけなので、心の擦れる感じ、それはたとえば傷つくことでもいいですし、こんなすごいこともあったとか、絶対伝えたいとか、心の大きな動きがあって、その動きと現状とに摩擦が生まれる。そうした熱量がないものはだめでしょうね。 ――安易にマーケティングの考え方に寄り掛かると作り手の熱量や目的を見失ってしまうんですね マーケティングとかマーケターの力は強いですし、最終的にはその力を借ります。マーケティングもちゃんとしないと、成功しないですから。 ――高橋さんも自身の哲学を軸にプロデューサー、ディレクター、演者の枠組みを再構築してヒットを生んでいますし、いろいろな立場の人がクリエイターやマーケターの枠組みを再構築できるようなことができればいいですね そうですよね。この記事をマーケターの方が読むのだとしたら、動物園を見るつもりで読んでもらってもいいと思います。自分たちと違うロジックで動いている生き物っているなと思う感じで。僕はエンタメよりの作り手ですけど、アートを作る人はまたもうちょっと違う想いで動いているんですよね。 マーケターの方はそれらの思考回路を真似るべきじゃないと思うんですけど、刺激とか、何かのヒントになるかもしれないです。違うものとして眺めていただく、そういう感じで。 ――ありがとうございました ◇ ◇ ◇