ヒットコンテンツメーカーの哲学、高橋弘樹氏の挑戦と成功するクリエイティブの秘訣
あと、若いころの方が心って動くので、若いころに心が動いた体験をもとにしていることもあります。心の感受性がやっぱり年々衰えてくるんですよ。なので、若いころにたくさんストックしておいたことをもとにすることも多いですね。
――よく時代より先に行きすぎた企画だと、早すぎてウケないみたいなこともありますが、そういったアウトプットの仕方を意識することはありますか あんまり意識してないですね。過去作ってきた番組は、構成要素を10とすると、8、9割が普遍的なもので構成されている気がしていて。あと、1、2割をちょっと流行りにする。色味とか、テンポとか。そういった小手先のことはやりますけど。でも、描いていることは普遍的なことが多いかもしれない。人生とは、とか、知的好奇心を刺激するとか。 ――最近だとコロナで大きく生活が変わりましたが、そういった時代背景を考えることはありますか 時代性みたいなことは結構意識したり、あるいは意識じゃなくて逆に巻き込まれたりすることもあって。
たとえばコロナの例でいうと、去年「世界の果てにひろゆき置いてきた」って番組を作りました。これはいろんな企画を考える中で、コロナの最中に海外の方を周りで見る機会が少なくなった。私たちもやっぱり海外旅行っていうことを忘れたなと。自分もテレビ局も海外に行かなくなったんですよ。なので、今、こういう映像を見たいんじゃないかという考えはありました。
企画者のフィロソフィー
――テクノロジーの進化で映像の表現方法が広がったり、AIを活用した企画が生まれたりしてくるであろう今後についてどう思いますか 分業でやっている企画とか映像はAIに代わられる部分もあるでしょうね。ただ、自分が描きたいから書いているとか、自分が作っていておもしろいからやっていることに関しては、あまり関係ない気がしていて。 自分がやりたいことをやって、そしてその世界観に視聴者がついてきてくれる。想いのある人が作っている番組なんだな、みたいなオーラが番組から醸し出されてくるんですよね。AIがやっても同じにはならないと思います。 ――クリエイターの人格やストーリーテリングと、視聴者との対話が重要であると たとえば「秒速5センチメートル」(2007年公開の日本のアニメーション映画。監督:新海誠)みたいなものを、AIに作られてもあまり感情移入できないと思います。作家が持っている精神的な自傷行為というか……新海誠さんっていう人が描くからいいんだと思うんですよね。作者との対話の気持ちが視聴者に生まれるものは代替されにくいでしょうし。そうじゃないものは代替されるんでしょうね。