相次ぐ米兵の性的暴行事件は、なぜ沖縄県に知らされなかったのか 「隠蔽」「形骸化」…指摘が浮き彫りにする、日米安保を取り巻く問題点
沖縄県で今年、3人の米兵が性的暴行事件で起訴された。しかし当初、これらの事件は警察からも外務省からも、沖縄県に伝えられていなかった。連絡するルートはあったが、機能していなかった。米軍関係者の性犯罪をあたかも“隠蔽”していたとも映る実態。自治体への情報提供体制が形骸化していることが、あらためて露わになった。 【写真】ある性犯罪事件の裁判が満員、強い違和感… 並んでいた女性に「関係者の方ですか?」と話しかけたが「違いますけど、何ですか」と言葉少な 男性が姿を消した先は、行政機関が入っているビル 取材を重ねて組織の不祥事を明らかにした2か月半
沖縄を含む南西諸島は、日米の対中国戦略の最前線だ。米兵による卑劣な犯罪や、過重な基地負担といった住民の不安・不満に、日米両政府が真剣に向き合わなければ、日米安全保障体制の足元はぐらつきかねない。(共同通信=吉岡駿、永井なずな) ▽少女誘拐 「『やめて』『ストップ』と言った」 「被害に遭って夜も眠れなくなり、外に出ることが怖くなった」 8月23日、那覇地裁。16歳未満の少女を誘拐し性的暴行を加えたとして、わいせつ目的誘拐と不同意性交の罪に問われた米空軍兵長ブレノン・ワシントン被告(25)の第2回公判が開かれた。少女本人が出廷し、被告と顔を合わせないよう設けられたパーティションの内側で、休憩を除き約5時間に渡って事件当日の経緯について証言した。 起訴状によると、ワシントン被告は昨年12月24日のクリスマスイブの夜、本島中部の公園で「寒いから車の中で話さない?」などと少女を誘い、車で連れ去ったとしている。
ワシントン被告は公判で「同意していた」と無罪を主張した。8月30日の被告人質問では、少女を18歳だと思ったと述べ「若い女性に関心はない。本当の年齢を知っていたら誘わなかった」と強調した。 米メディアや米軍の準機関紙「星条旗新聞」も事件について報道している。米軍関係者の1人は「被害者は子ども。性犯罪に厳しいとされる米国の感覚では到底許されない」と指摘する。 ▽政府は把握も、県に知らせず この誘拐暴行事件が明らかになったのは6月25日、地元メディアの報道によってだった。3日後の28日には別の地元メディアが、5月にも海兵隊員が不同意性交致傷容疑で逮捕された事件が起きていたと報じた。 いずれの事件も報道された時点で那覇地検が起訴しており、捜査は終結していたが、沖縄県警は「被害者のプライバシー保護」を理由に報道発表を控え、県への伝達もしていなかった。県警側から連絡を受けた外務省も、捜査当局の判断に準じ、沖縄県に知らせなかった。