相次ぐ米兵の性的暴行事件は、なぜ沖縄県に知らされなかったのか 「隠蔽」「形骸化」…指摘が浮き彫りにする、日米安保を取り巻く問題点
沖縄県幹部は「米兵による二つの事件の報道は寝耳に水だった。基地と隣り合わせの県民にこそ情報が必要なのに、知らせなかった対応は不正義そのものだ」と憤った。県民の反発は一気に広がり、性暴力撲滅を訴えるフラワーデモや、県内自治体の首長らによる政府への対策要請といった抗議活動が連日行われた。 ▽連絡体制見直し、新たな事件 自治体に情報が入る仕組みは、実は存在している。日米両政府は1997年に、米側から防衛省などを介して自治体に通報する連絡経路について合意しているのだ。しかし、6月に発覚した2事件ではそれが機能せず、形骸化している実態が露呈した。 沖縄の激しい反発を受け、事態を重く見た政府は7月5日、捜査当局が米軍人を容疑者と認定した性犯罪事件について、非公表であっても例外なく県に伝えるよう運用を見直した。伝達のタイミングは「事件処理が終了した後」とした。沖縄県警も対応をあらためた。これまでは米兵の性的暴行事件について、逮捕などで報道発表する場合には沖縄県にも連絡していた。それを、報道発表していないケースでも、摘発や書類送検といったタイミングで県に通報することにしたのだ。
外務省関係者は「公表や県への連絡をしなかった理由として、プライバシーを持ち出すのはおかしな話で、政府内には速やかな改善が必要だとの判断があった」と内幕を明かす。 こうした中、再び米兵による性的暴行事件が明るみに出た。 9月5日午前、沖縄県警は成人女性に性的暴行を加えて負傷させたとして、不同意性交致傷の疑いで海兵隊の男を書類送検した。すぐさま午前のうちに、県へ事件について連絡した。20日には、那覇地検が海兵隊員を同罪で起訴し、防衛省沖縄防衛局が県に起訴を伝えた。 県警や政府は新運用に対する積極姿勢を示したが「被害者保護や捜査に支障がない範囲なら、立件を待たず連絡できたはず」(県議)との不満もくすぶる。 ▽知る権利ないがしろ 米軍関係者の事件が公表されていなかったのは、沖縄県警だけに限らない。青森、東京、神奈川、山口、福岡、長崎の各都県でも近年、米兵らの性犯罪は報道発表されていなかったことが判明した。警察や国側から自治体への、事件に関する連絡がなかった事例も確認された。