相次ぐ米兵の性的暴行事件は、なぜ沖縄県に知らされなかったのか 「隠蔽」「形骸化」…指摘が浮き彫りにする、日米安保を取り巻く問題点
専修大の山田健太教授(言論法)は公表についての考え方をこう説明する。「米軍関係者は日米地位協定上の身分を保障された権力者で、公益性や公共性の観点から事件事故の公表は必要だ。被害者のプライバシーに配慮することは前提だが、事件を周知することで、再発の抑止や背景にある構造的な問題を問うことにつながる」 また、まるで足並みをそろえたかのように警視庁、各県警が発表を控えていたことについて「人々の知る権利をないがしろにした運用だ。いつどのように始まったのか、政府の指示があったのか、検証が必要だ」と訴えた。 ▽実効性問われる再発防止策 国土面積の約0・6%の沖縄には、国内の在日米軍専用施設の約7割が集中する。1989年から昨年までの35年間で、米軍構成員による不同意性交などの摘発件数は全国で88件。このうち沖縄県内が半数近い41件を占めている。1995年には小学生の女児が米兵3人に暴行される事件も発生した。
米兵による凶悪事件が起きるたびに、在日米軍は対策を打ち出す。だが沖縄では「ポーズだけ」との受け止めも強く、玉城知事は9月6日「綱紀が緩みきっている。米側は『個人の問題で組織に問題はなく、隊員の教育も進めている』と言うが、実効性があるのか」と疑念を示した。 6月に二つの性的暴行事件が発覚した後、米側は7月、主に三つの再発防止策を打ち出した。 (1)地域住民との協議の場「フォーラム」の設置 (2)県警との合同パトロール (3)飲酒検査の強化 しかし、いずれも具体的な動きは見えてこない。 フォーラムは早ければ9月中にも準備会が開かれる見通しだったが、県担当者は「時期や議題の情報は入っていない」と話す。玉城知事は9月22日、記者団の取材に「悠長すぎるとしか県民は受け止めない。真剣に責任を持ってやろうとしているのか」と憤った。 同じような試みは過去にもあった。2000年に発足した「米軍人・軍属等による事件・事故防止のための協力ワーキングチーム」(CWT)だ。日米両政府や県、市町村などが構成員だが、開催は2017年が最後だ。これと、今回の「フォーラム」がどう違うのか、明確にはなっていない。