「なんで自分ばっかりしんどいのかな」引きこもりから日本初のパラ卓球シングルス金メダリストになった和田なつき
後ろから話しかけられない座席
――卓球以外の場面ではどうですか。 片付けの順番を決めていたのにそれが崩れたりしたら、こうじゃないって納得がいかなくて、癇癪が起きたりします。 ――こうやって話している限りでは、全くわからないですね。苦手な傾向ってあるんですか。 漢字は、難しいのが続くと綺麗な形として私の頭に入らなくて、歪んで見えて書き写せないです。読むのはなんとなく読めたりするんですけど、書いてって言われると書けなかったり。 数字は足すことはまだ得意なんですけど、引くのは難しいです。数字を数えてるときに話しかけられてしまうと全部忘れてしまったり。 あと、1対1の会話は得意だけど、4、5人で会話が弾んでくると入れなくなってしまいます。 ――そうなんですね。 所属の内田洋行の皆さんにも配慮してもらって、私の席は、基本的に後ろから声を掛けられない配置です。座るとみんなが視界に入ります。 突然話しかけられると全部バーンって落ちて、緊張度が一気に上がって、それが抜けるのに時間がかかってしまうので。 ただ、入ってくる情報に対して過敏だからか、映画とかは2回見たらセリフはだいたい頭に入ります。英語版と日本語版両方を覚えていたぐらい。 ――それはすごいですね(笑)。和田選手の障がいは、一般的に何と呼ばれるものなのでしょうか。 ざっくりまとめたら、知的障がいと、たぶんADHDの1種です。 他動の人とか、物忘れがひどい人もいるし、自閉の子もいるので、症状は人それぞれ違うんですけど。
卓球がなかったら外に出られてない
――聞けば聞くほど、1対1で向かい合い、ボールタッチの感覚が重要な卓球は、和田選手に向いてますね。 そう思います。チームスポーツは無理だし、水泳や陸上のように自分で自分を追い込む競技は、方法がわからない。たぶんいい感じにサボってしまいます(笑)。 ――卓球に出会えて、良かったですね。 はい。卓球してなかったら、今ごろ何してたんだろう。まず外にも出られてないし、この内田洋行にも入れてない。